研究課題/領域番号 |
23K00911
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
薩摩 真介 立命館大学, 文学部, 准教授 (70711125)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | イギリス / スペイン / シーレーン / 航行の自由 / 大西洋世界 / 海軍 |
研究実績の概要 |
研究開始の2023年度は下記に述べるように本務校での勤務が多忙を極め、研究を計画したようには進めることはできなかった。そのため昨年度は新たな一次史料の調査や実証研究を進めるというよりも、これまでの研究成果をまとめるとともに、今後の研究の展開や史料調査のための足固めに注力することに主眼を置いた。 前者の研究成果のまとめとしては、かねてイギリスの学術雑誌Journal of Imperial and Commonwealth Historyに投稿していた関連するテーマの論文 'Severing the Sinews of the Spanish Empire: British Naval Policy and Operations Regarding the Silver Fleets during the War of Jenkins’ Ear, 1737-1740’を、査読者の修正要求に基づく修正を経て昨年度に無事に出版することができた。Journal of Imperial and Commonwealth History誌はイギリスにおける帝国史についてのトップジャーナルであり、同誌に掲載ができたことは今後の研究の上でも大きな弾みとなった。また参考までに、国立民族学博物館の共同研究「人類史における移動概念の再構築ーー「自由」と「不自由」の相克に注目して」で進めていた関連するテーマの論考も論集として出版される予定である。 一方、今後の研究の展開や史料調査のための基礎的な足固めについては、過去に収集していた関連する一次史料の整理を進めるとともに、本課題で中心的に扱う問題についての二次文献、特にイギリスの対スペイン領貿易関連の文献や、スペイン植民地側の政治経済史に関する文献、さらには広く近年の帝国史の動向に関する文献などを読み、研究テーマの背景的知識の調査をさらに進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は本務校の学科主任に相当する役職に就いたため、学内の諸業務や諸案件の対応に追われるうちに、一年が終わってしまった。その結果、誠に遺憾ながら、当初の計画のようには研究を進めることはできなかった。 とくに、授業期間中は言うまでもなく、授業のない、春休み期間や夏休み期間の間であっても、主任会議などの業務が断続的に入ったため、史料調査のための海外渡航に必要なまとまった時間を取ることができず、イギリスなど海外の文書館での一次史料調査のための海外渡航は、昨年度は見送らざるを得なかった。 ただし、その間も二次文献による調査は、時間を見つけてかろうじて進めることができたが、全体の進捗状況としては当初の計画より遅れてしまったと言わざるを得ないのが実情である。しかし、幸いにも学科主任の役職は昨年度限りで終了したため、本年度以降に、可及的速やかにイギリスやフランス、ジャマイカなど海外の文書館での一次史料調査を再開して、これまでの遅れを挽回したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず目下の優先事項としては、上述のように、昨年度はあきらめざるをえなかった海外の文書館での一次史料調査を実施したい。具体的にはイギリスの英国図書館や、英国国立公文書館、ケンブリッジ大学図書館、フランスの外交文書館などを考えている。また近年中に訪問を予定しているジャマイカの文書館での資料調査のための下準備もあわせて始めたい。 次に、出版物としては、上述の国立民族学博物館の共同研究に基づく論考の出版に向けての最後の修正を進めるとともに、本科研の成果として、新たな論文の構想を練りたい。その論文は、可能であれば、英語論文として数年以内に再び海外の国際査読誌への投稿を目指したい。またそれとあわせて、すでに入手している一次史料や利用可能なオンライン史料集に収録されている史料の閲覧と分析、整理を進めていきたい。加えて、二次文献の渉猟を通じた、イギリス帝国史やスペイン領植民地史の背景知識のさらなる蓄積も継続して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述のように2023年度は、本務校の学科主任に相当する役職に就いたため、学内の諸業務の対応に忙殺され、当初の計画のようには研究計画を進めることはできなかった。とくに、本来は海外での史料調査に充てる時間を確保し得たはずの春休み期間や夏休み期間の間も、主任会議などの業務のため渡航に必要なまとまった時間を取ることができず、イギリスなど海外の文書館での一次史料調査のための海外渡航は、昨年度は見送らざるを得なかった。 本研究のプロジェクトの予算の多くは主として、このような史料調査のためなどの海外渡航費等に充てることを計画していたため、それが実現しなかったことにより、この予算は翌年度に持ち越されることとなった。繰り越した金額は、2024年度に、このような海外での史料調査、あるいは研究テーマに深く関わる国際学会の参加のために支出する予定である。
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