研究課題/領域番号 |
23K00919
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寒川 朋枝 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 特任助教 (30526942)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 旧石器時代 / 石器使用痕分析 / 石器技術学 / ナイフ形石器 / 細石刃 / 台形石器 / 九州地域 / 実験考古学 |
研究実績の概要 |
これまでの九州地方における細石刃石器群の使用痕分析の結果から、九州内出土細石刃石器群は機能面の地域差があったことが判明してきており、現在その前段階のナイフ形石器群についても、南九州地域と西北九州地域において分析を進めてきている状況である。今年度は、九州東南部である宮崎県域を中心に15遺跡の資料をピックアップし、石器使用痕分析と石器技術学の視点から、後期旧石器時代のナイフ形石器終末期石器群と細石刃石器群の資料の観察と分析を行った。 石器使用痕分析の結果、小型ナイフ形石器の使用痕の特徴としては、先端部の加工や使用が認められる個体が一定数認められた。こうした特徴は鹿児島県桐木耳取遺跡など南九州地域の資料でも確認される特徴といえる。また、小型台形石器についてはその一部資料に衝撃剥離痕が確認されたが、割合としてはさほど多くない状況であった。 そして製作技術としては、船野型細石刃核で従来より指摘されていた固定具痕であるが、黒仁田遺跡や清武猪ノ原遺跡第5区の船野型細石刃核でも、打面に残された両側面側から対向するかたちで入る「固定痕」とされた剥離痕が認められた。しかし、問題となる剥離面の剥離開始部の縁辺部につぶれはほとんどないことから、固定具などの接触痕の可能性は低いと考えられる。また、小型ナイフ形石器の裏面調整については、小田元遺跡出土資料では剥離開始部が等間隔的で、かつ砕けていないことから押圧の可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来の計画としては北部九州の資料についても調査を行う予定であったが、業務との兼ね合いで十分に調整を行うことができなかったため、予定を変更し2年目に行うこととしている。また、資料調査のデータが揃ってきた段階で、石器製作・使用実験も行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、調査データが不足している西北九州や北部九州地域を中心に資料調査を行い、補足として九州南東部地域の資料の再調査を行うことも計画する。また、以上の観察・分析により得られたデータに基づき仮説を立て、石器製作使用実験も行う予定である。最終年度には、蓄積された石器使用痕と製作技術・石器使用実験のデータに基づき、九州地域内におけるナイフ形石器群から細石刃石器群への文化移行期の様相について、検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査の調整が進まず予定していた資料調査が行えなかったため、計画していた旅費が残ることとなり、これを繰り越し翌年度分の旅費として資料調査を行う予定である。また、物品費については、従来より使用していた顕微鏡用カメラが不調となったため、十分な研究体制を整えるためにカメラを買い換える費用として使用する予定である。
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