研究課題/領域番号 |
23K00962
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
山田 格 独立行政法人国立科学博物館, その他部局等, 名誉研究員 (70125681)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 頭骨標本 / 3Dフォトグラメトリ / 頭骨形態基準面の制定 / ウェブ公開 / 分類学 / 博物館 |
研究実績の概要 |
国立科学博物館が所蔵する鯨類3種のタイプ標本は,いわゆるスミソニアン博物館を含め国内外の研究者が来訪し比較研究の対象としてきた.鯨は標本を移動して比較観察する事は不可能に近い.3次元構造物の3Dデータ化は,伝統的にはステレオペア写真から地図を作成する「図化機」などが初期の例だ.1990年代になるとPCなどの普及に伴い3次元スキャンが実用化され,当館日本館前の「シロナガスクジラ実物大モデル」は,博物館展示物としては3次元スキャナを用いた草創期の成果だ.その後2015年頃から国立科学博物館ではフォトグラメトリによる三次元形態の正規表現について試行を行い.比較研究に用いてきた.本研究では,当館で所蔵している鯨類のタイプ標本,すなわち,イチョウハクジラ,ツノシマクジラ,クロツチクジラの3種の頭骨について新たに3Dデータ化を行い,当館ホームページ上に公開する準備を行っている.フォトルラメトリ用の写真撮影と3Dデータ作成は終了したので,Web上にアップロードする直前の状況である.これについては使用するサーバのデータセキュリティなどについて,当館情報担当部局との協議を進めている.さらに,本研究では頭骨などの複雑な3次元形をもつ生物要素を比較検討する研究法を検討しているが,人類学では,頭骨の比較研究のために基本となる正規面(耳眼水平面)が1884年には制定され研究の基本となっている.鯨類の頭骨研究においては基準面の認識がなく,研究者が任意に想定する基準面によって議論が行われている.本研究の成果によって鯨類頭骨の基準水平面として,正規頭骨面を,頭骨の長軸と左右眼窩の高さによって基準面を決定し,本年オーストラリアで開催される Biennial Conference on the Biology of Marine Mammals で提言し頭骨形態の比較研究をより客観化することを期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ取得などは予定通り進んでいるが,データ処理アプリケーションのライセンス問題が生じて数ヶ月の遅延が生じた.これは館内他部局のアプリケーションを借用するなどで克服し,最終的にはアプリケーション問題は解決した.また,成果3Dデータを公開するサーバの,データセキュリティに関して疑義が提起され,当館情報担当部局と対応を検討しているが,是については間もなく解決すると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
作成データをアップロドを行うサーバの決定にはさほど時間を要することはないと考えられるので,研究の遅れは早晩解消され,3Dデータの,一般向けの通常解像度公開と,研究者向けの高精細データの公開システムを構築する.また,2024年11月オーストラリア(パース)で開催されるBiennial Conference on the Biology of Marine Mammalsにおける頭骨比較形態学的礎にお関する提言を行い,頭骨形態の標準化の提言を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会出席のための海外旅費が高騰しているとのことに対処すべく,もっとも基礎になるデータであるフォトグラメトリデータ作成を想定以上に自己努力で行ったこと.
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