研究課題/領域番号 |
23K00980
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
渡辺 満久 東洋大学, 社会学部, 教授 (30222409)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 海成段丘 / 活断層 / 海岸隆起 / 南紀海岸地域 / 三陸海岸北部 / テフラ |
研究実績の概要 |
南紀の海岸地域を踏査し、MIS 5eに形成されたと推定される海成段丘面の被覆層を分析した。御坊市~串本町串本の間では、段丘面構成層を確認することができなかった。その東方、串本町田原(森ケ崎)と那智勝浦町下里付近においては海成段丘面構成層最上部の試料を採取し、研究室において顕微鏡観察を行った。その結果、いずれの試料にも大量の火山ガラスが含まれることを確認することができた。この火山ガラス(テフラ)は、海成段丘面の形成年代を示す可能性がある。このため、専門分析機関に送付して鑑定を依頼中である。また、潮汐差を考慮したうえで、隆起ベンチの高度分布を再検討した。大枠ではこれまでの成果と大きく異なることはなかったが、那智勝浦町付近で最も高度が高いことを、より明確に示すことができた。 研究室では、様々な地域の空中写真判読を行っている。その成果として、次のことが判明した。福井県美浜町の海岸には、白木-丹生断層が分布している。従来、この活断層は海域へ連続すると考えられてきたが、海岸線と並走するように連続する可能性がある。西南日本外帯の海岸隆起を考察する上で参考になる事例と考え、現地調査を実施した。その結果、活断層の走向が変化する地点の特徴や、海岸線の形態と断層変位地形との対応についていくつか知見を得ることができた。 海岸隆起に関しては、岩手県三陸海岸北部の調査も継続している。八戸~久慈周辺の海成段丘面の高度を整理した結果、海岸部より内陸部の方が高度が高い可能性があることがわかってきた。現地調査を実施して、MIS 5eに形成された海成段丘面と特定し、その旧汀線高度を詳細に検討することを試みた。注目している海成段丘面の旧汀線高度は、明らかに内陸側で高くなることを確認することができたが、海成段丘面を覆うテフラの同定に関しては、まだ十分な成果を得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初は、南紀海岸地域と四国南岸地域を調査する予定であった。南紀海岸地域では、予定通り、重要な知見を集積することができ、ほぼ調査は終結状態にある。しかし、四国南岸地域での現地野外調査は実施することができなかった。これは、福井県美浜町や三陸海岸北部において特徴的な変動地形を見出したため、これらの地域における調査を優先したためである。福井県美浜町や三陸海岸北部での調査結果は、本研究課題と密接にかかわるものであり、研究自体が停滞したわけではなく、非常に有益な関連情報を追加することができたと考えている。このため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
全体としては、研究の進捗状況は良好である。三陸海岸北部における調査結果は非常に重要な知見を与えると考えられるので、まずこれを完結するようにしたい。引き続き、南紀海岸地域での補完調査の必要性を検討し、四国南岸地域での現地野外調査を進める予定である。これら地域の調査結果をもとに、西南日本外帯における海岸隆起の特性を明らかにし、陸棚外縁活撓曲の活動との関係を慎重に検討してゆく予定である。
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