研究課題/領域番号 |
23K01000
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠城 明雄 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (00243866)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | インフラストラクチャ― / 日常生活 / 社会地理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1920年代から30年代にかけて、工業化と都市化が進展した日本の地方都市における日常生活の構造転換を、都市インフラストラクチャーとの関係から分析することで、日本の「近代性」を特質の、「地方」の視点から考察することにある。本年度は主に以下の作業を中心に研究を進めた。 ①1920年代の下関市における港湾修築事業と漁港整備及び魚市場移転などの諸問題に関わる資料を収集し、事業をめぐる行政と政治家の動向、また地域住民間の対立の社会・地理的な背景を明らかにした。 ②1930年代初の広島市を対象にして、し尿処理の市営事業化の実施の経緯に関する資料の収集と分析を行った。農会側が汲み取り料金の徴収を要求したことで、市会で急遽市営による汲み取りが決定されたこと、市営による汲み取り料金に対して、一部の衛生組合などから値下げの要望が出されたこと、混乱に乗じて汲み取りを行う民間業者が出現したこと、市営事業化をめぐる住民の対応が地域ごとに異なっていたことなどを明らかにした。 ③社会地理学研究とインフラストラクチャー研究について、その分析枠組みや手法の検討を行った。前者に関しては、フランスの社会地理学の先行研究を検討し、インフラストラクチャ―の建設をめぐる地域住民間の対立や地域開発をめぐる紛争に関わる研究の分析視点や方法などを整理した。また後者に関しては都市政治生態学研究についてその新たな展開の可能性と問題点などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度下半期に学内業務が増加したため、資料・フィールド調査に出かける時間が十分に取れなかったことから、当初予定していた研究計画からやや遅れている。一方で、学内で行うことのできる社会地理学やインフラストラクチャーに関する先行研究の検討については、予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
資料・フィールド調査について、できる限り進める予定である。調査が計画通り進まない場合、すでに収集済の資料の再検討のほか、社会・政治地理学やインフラ研究の研究動向の検討をより深く行うなどの対応策も考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務が増加したため、資料・フィールド調査を十分に行うことができなかった。次年度以降に調査を行うほか、場合によっては物品費の購入額を増額する。
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