研究課題/領域番号 |
23K01001
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
滝波 章弘 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 准教授 (30314975)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | フランス / 言説 / 多文化社会 / 仏共和主義 / ブラック=ブラン=ブゥール |
研究実績の概要 |
2023年度は、マイノリティ問題に関わるアンティル系フランス人の元選手に関して、人生上の軌跡や活動を把握するとともに、本人が発した音声資料や執筆した文字資料の収集をおおかた完了させた。実際の資料は他にも多くあるが、主な執筆資料はほぼ収集し、討論資料やインタビュー資料は元選手の考え方を捉えるのに充分な量に達した。さらに、音声資料の文字起こし、そして音声・文字資料の翻訳も充分な程度に進めることができた。 次いで、当該選手の言説の意図や意義を位置づけるため、フランスの社会・政治的な出来事の動向を追った。まずは、スポーツと社会・政治がどのように繋がり、それが言説としていかに表出されるかの方法論的な検討が必要になるので、事例としてフランスの著名な新聞におけるW杯関連の論説記事を四半世紀分取り上げ、スポーツの多文化性についての主張や議論が政治・社会とどう関連づけられるかを考察した。その結果、記事の主張や議論の在り方は、時代の政治・社会的動向を投影するだけでなく、言説の担い手の民族的な属性によっても左右されることが示された。さらにまた、言説が仏共和主義を尊重するか、多文化主義を尊重するかで揺れ動く様相も明らかにされた。以上の内容は論文として公開した。したがって、元選手に関しても、出自や時代背景だけでなく、仏共和主義と多文化主義の間の葛藤があるのではないかという仮説を立てることができた。 なお、言説内容は、言説が発せられる場、言説が言及する地域にも影響を受けるが、こうした場所と言説の問題は複雑なため、アプローチの妥当性を確かめておく必要がある。そこで、より一般的な空間的言説を対象として、場所と言説との関係性の把握にどのような分析が可能かを検討した。以上の内容は国際的な批判を得るために英語論文として公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
言説分析の手法的な妥当性の検討、ならびに言説の背景となる時系列的な政治・社会的動向の考察を優先したため。
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今後の研究の推進方策 |
研究主題としている元選手の言説の具体的な分析に入るとともに、分析方法の有効性を確かめる作業を並行して進めていく。その際、キーワードの意味に注目する分析、場所と言説の関係を理解する分析、そして言説の時系列的な変化を把握する分析を中心とする。また、2023年度と同様に、分析と考察の結果を論文として公開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
B-Aは18円は、2023年度購入分によって発生した端数なので、2024年度の使用に基本的な変更はない。
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