研究課題/領域番号 |
23K01011
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
鏡味 治也 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (20224339)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | デザイン民族誌 / モノ研究 / 操作連鎖 / 動作分析 |
研究実績の概要 |
本研究初年度として、申請者のかつての教え子であり、本研究の研究協力者であるMeirina氏、Prananda氏、Amira氏が所属するインドネシアのバンドン工科大学造形美術デザイン学部を訪れ、三氏に本研究の主旨と方針を伝えて協力を依頼し、快諾を得た。彼らの担当する学部・大学院授業での学生とのやり取りを素材にして、デザイン民族誌の調査技法開発を目指すことを合意した。 さらに期待される成果のひとつとして「デザイン民族誌調査手法」と題する英文の教科書の共同執筆を提案し、おおよその目次構成と分担について話し合った。本書はオンライン公刊を想定し、本研究が終了する2027年度までに完成・公刊を目標とすることも確認した。 また三氏が担当する学部と大学院修士課程の授業を見学し、調査手法について教員・学生と意見交換した。あわせて本研究の目的であるデザイン民族誌の調査手法開発のための参考資料として、文化人類学の民族誌の古典書籍十数冊を購入して持参し、大学のデザイン民族誌研究室に置いて学生とも共有してもらうことにした。調査手法の深化や浸透を確認するために、毎年1~2回定期的にバンドン工大を訪れて、学生の研究の進展を見守りたいことも伝え了承してもらった。 さらに今回は同じバンドン市に位置する私立テルコム大学の創造的産業学部視角コミュニケーション・デザイン学科で話をする機会を得、デザイン民族誌の内容と手法についての話をして、教員・学生と意見交換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画通りバンドン工科大学所属の3名のデザイン民族誌研究者と協力して、デザイン民族誌の調査手法開発を始める合意を得たほか、期待できる研究成果としてデザイン民族誌の調査法を説いた英文教科書の共同執筆を提案し同意を得た。 さらに当初の予定になかった私立大学のひとつでもデザイン民族誌に関する話をする機会を得、バンドン工科大学での調査技法開発を補佐する事例を提供することが期待される調査対象にもつながりが得られた。このようなバンドン工大以外の大学のデザイン系学部の学生や教員からは、デザイン民族誌という新たな分野に関するさまざまな考えや期待が寄せられることになり、本研究で開発を目指す研究手法の中味をより豊かにすることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き研究協力者の在籍するインドネシア・バンドン工科大学造形美術デザイン学部を定期的に年1~2回訪れ、研究協力者の担当する学部および大学院授業を見学して、その調査指導方法を確認しつつよりよい指導法を教員と共同で探るとともに、そうした指導を受けた学生の調査研究の進展具合を見定めて、調査手法やその指導方法の有効性を検証する。 あわせてバンドン工科大学以外の大学のデザイン系学部にも積極的につながりを見つけて、デザイン民族誌の魅力を紹介し、それぞれの教育課程にどう取り入れられるか、当該大学の教員・学生と意見交換する。このようにデザイン民族誌のすそ野を広げることも積極的に試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究協力者側の都合もあり、年度末の2月に約1週間のバンドン工科大学およびテルコム大学訪問ができただけで、可能であれば実施したいと思っていた学生を連れた調査現場訪問も実現できず、研究協力者教員や学生の移動・宿泊費が未執行になり、予算未消化分が生じた。 次年度(令和6年度)は今年度未使用分と合わせると、申請者のバンドン工科大学訪問が2回できることになり、これを利用して9月と2月に訪問し、学生の研究進展と指導した調査技法の有効性をより継続的に見守ることに利用したい。またそのいずれかの機会に、研究協力者および学生と共同でバンドン市近郊の現地調査が可能であればぜひ実施したい。
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