研究課題/領域番号 |
23K01036
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
村山 絵美 大阪公立大学, 人権問題研究センター, 特別研究員 (60582046)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 戦争体験者 / 記憶 / 伝承 / 沖縄戦 / 家族 |
研究実績の概要 |
本研究は、戦争体験者とその家族(特に子や孫の世代)を事例として、彼らの戦後の生活史の中で戦争体験を幅広く捉え直すことにより、記憶の伝承への民俗誌的アプローチを試みようというものである。具体的には、沖縄戦体験者の後続世代、ならびに、彼らを取り巻くモノ(位牌、遺影、墓等)やコト(盆や清明祭、集落の慰霊祭、戦死者の供養等)を記憶の媒体と捉えることで、彼らが生きる生活空間(民俗空間)の中で戦争の記憶がどのように共有・分有されてきたのかを微視的に検証する。 本年度の研究は、大きくわけて二つの作業を実施した。一つは、戦争体験者と後続世代の関係を検討するため、先行研究の収集と分析を行った。さらに、図書館や研究機関などを通して、戦争体験者の子や孫の世代が家族の戦争体験について書いた手記や自分史に関するデータを収集し、それらの整理・分析を進めた。これらの作業を通して、家族の中で戦争体験がどのように語り継がれてきたのかを具体的に検証するための端緒をひらくことができた。 もう一つは、戦争体験者の家族への聞き取り調査である。自分史として沖縄戦体験を執筆された体験者の家族を対象に、出版に至るまでの経緯や、家族内の戦争の記憶の継承についてインタビューを実施した。家族への聞き取り調査は、来年度以降に重点的に進めていく必要がある。また、慰霊の日などに、戦争中の避難経路、家族の死没地、戦死者が祀られている慰霊碑などを巡る家族もおり、多くの場合、その実践の担い手は次の世代に移行している。家族へのインタビュー調査に加え、今後はこのような記憶実践に関する調査も行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、戦争体験者の家族への聞き取り調査を目的としたフィールドワークを2回実施する予定であったが、研究協力者との日程調整が合わず、1回は中止となった。その一方、想定していた以上に自分史等の資料調査が進んだため、おおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、今年度と同様に資料調査(沖縄戦体験者やその家族が書いた自分史や手記の収集と分析)と沖縄戦体験者やその家族への聞き取り調査を並行して実施する予定である。特に次年度は、沖縄でのフィールドワークを発展的に行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では沖縄でのフィールドワークを2回実施予定であったが、研究協力者との日程調査が合わず、調査回数が1回となったことが影響している。その分、資料収集にまわしたが、次年度使用額が生じることになった。次年度は、フィールドワークを重点的に行う予定のため、次年度以降の調査費用として使用したい。
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