研究課題/領域番号 |
23K01046
|
研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
比嘉 理麻 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (00755647)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 基地反対運動 / アナキズム / 自然保護 / 環境問題 / 社会運動 / 沖縄 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、沖縄県名護市辺野古と東村高江における米軍基地の建設強行にともなって、従来の運動に限界を感じた人びとが、既存の人間主体の基地反対運動から、多種多様な生き物と〈自然をも主体とする基地反対運動〉へと新たに活動を展開する動きを明らかにすることにある。この新たな動きは、自らの生活が埋め込まれた、より広い自然環境の総体を守るものであり、基地反対運動の生態学的転回と呼びうるものである。本研究は、人と自然環境やあらゆる生き物たちが一緒になって脱支配へと向かうアナーキーな力と可能性を掬いあげ、人間だけのアナキズムではなく、動植物を含めた来たるべき〈命のアナキズム人類学〉の新理論を打ち立てることを目指す。 この目的を達成するため、まず初年度にあたる2023年度は、名護市辺野古の米軍基地建設における「計画変更」の全体像を把握し、軟弱地盤や活断層、「遺骨入り土砂」採取の問題点を文献調査により明らかにした。次に、国頭村と東村にまたがる米軍基地「北部訓練場」の部分返還に伴い、建設強行されたヘリパッドの問題点や環境破壊の実態について文献調査により把握した。さらに、それらの文献調査と並行して、基地建設強行の実態に抗して、新たに実践されている米軍基地反対運動のフィールドワークに着手した。具体的には、環境破壊への抗議・異議申し立てと一体となった米軍基地反対運動の現状を理解するために、地域住民のみならず、在野の生物学者や環境NGO、エコガイドなどの多様な主体による、基地反対運動の実践について、参与観察とインタビューを行なった。くわえて、それらの研究成果を学会発表と論文執筆により公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は、おおむね順調に進展している。まず、今後の調査に関して、調査地の人びとに協力していただけることになった。そのため、2024年度以降の研究計画においても、課題遂行上、大きな問題はないと考えられる。 また初年度は、具体的に、名護市辺野古の基地建設計画と自然保護政策、東村高江の米軍ヘリパッド建設と環境破壊の実態に関連する資料収集・整理を行なうとともに、自らの生活が埋め込まれた自然-社会環境の総体を守る、新たな基地反対運動に関連するフィールドワークに着手した。それらの研究成果として、論文2本、学会発表3回を公表した。 以上の理由からおおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、研究課題のうち、主に米軍基地建設の進展と環境破壊の実態等のマクロな現状把握に焦点をあてたため、今後の研究の推進方策として、2年目にあたる2024年度は、まず自らの生活が埋め込まれた自然-社会環境の総体を守る、新たな基地反対運動に関連するフィールドワークを実施する。具体的には、地域住民や環境NGO、在野の生物学者やエコガイドなど、多様な主体による基地反対運動について、参与観察とインタビューを行ない、自然と共に生きる暮らしと一体となった、脱支配の実践を記述し、分析する。さらに、自然保護や野生動物との共生に息づいている脱支配の実践を理論化し、アナキズム人類学の一般理論を構築するために、アナキズム・環境問題・社会運動に関する理論研究に着手する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
沖縄県名護市辺野古における現地フィールドワーク実地調査(国内調査)を3月に予定していたが、先方の事情により、沖縄県名護市辺野古における現地フィールドワーク実地調査(国内調査)を実施することができなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。次年度使用額の使用計画は、沖縄県名護市辺野古における現地フィールドワーク実地調査(国内調査)を実施する予定である。
|