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2023 年度 実施状況報告書

デジタル社会における議会・議会代表のあり方に関する比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K01057
研究機関九州大学

研究代表者

赤坂 幸一  九州大学, 法学研究院, 教授 (90362011)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2028-03-31
キーワード議会 / 代表 / デジタル化
研究実績の概要

本年は、デジタル社会における議会・議会代表のあり方につき、トイプナーの提唱する「デジタル時代の法主体」という考え方、あるいはトーマス・ヴェスティングの提唱になる「Homo Digitalis」、すなわちデジタル人間という概念を手がかりに、各人がユニバーサルな秩序の個々の部分として位置づけられるのではなく、まさに個々人、かつ特有の存在(=singularという固有性を持った存在)として位置づけられる社会について、最新の理論動向を検討した。

そこでは、個人はもはや既存の制度の中の一部分、あるいは既存の社会秩序の一部分として位置づけられるのではなく、そしてまた、その部分秩序を以下にして議会に代表させていくのか、という議論ではなく、各人が「制度」から離れた場所、あるいは制度外在的にどのように自分たちの意見を社会に反映するのか、という視点が重要になっている。とりわけ、さまざまな電子媒体が効果的に機能し、自身と同じようなシュヴァルム(群れ)がどこにあるのかを容易に探すことができ、また、その離合集散が比較的柔軟にリキッドな形でなされていく社会が構想されている。

もっとも、現在のところ、そのような変化は移行期(テイラーの言う「リミナリティ」)にあり、従来のような議会中心の意思形成システムを中核に据える立場からすれば、容易に理解されない面があることも事実であるが、少なくとも、このような理論的討究及び社会学的な実態解明を踏まえた議会制論の最構成が必要であることを明確にすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

この数年の間に、コロナ禍を契機とする公法理論の全面的な再検討が、国内外で急速に進展している。それは枚挙のいとまがない程の大規模に達しているが、とりわけ、2020年9月の法律家新聞Juristen-Zeitungに掲載されたWhy Constitution Matters; Verfassungsrechtswissenschaft in Zeiten der Corona-Kriseは、メラース教授ほか、著名な公法学者が結集しつつ、基本権制限のあり方から統治構造の改革まで、柔軟な理論的再検討を行うもので、大変大きな影響を与えた。
本研究では、このような内外の研究の進展を着実にフォローしたうえで、デジタル社会の議会制や議会における専門知の反映のあり方に向けた憲法学上の検討枠組の提示を行う予定であるが、そのような観点から、オンライン国会の問題を議会代表との関係で再考する論考を公表することができた(「憲法問題としてのオンライン国会」)。2024年度には座談会記録を含めて書籍化される予定である。
議会制度については、ITC技術を活用したオンライン化が進展し、その実務動向を検討する研究関心が多くみられたが、申請者が着目したのは、そのような状況であるからこそ逆に照射された、伝統的な議事空間が織りなす「象徴的な意味の世界」を描き出す研究動向である。とりわけ、シェーンベルガー教授によるAuf der Bank: Die Inszenierung der Regierung im Staatstheater des Parlaments, C.H.Beck, 2022で、議会という「国家劇場」における政府座席の位置の変遷が、いかなる憲政史的含意を持つかを検討する労作で、演劇性に着目する上記論考にも、多大な影響を受けた。

今後の研究の推進方策

上に見たような研究動向は、また、リア・マリー・ヴァイシェード教授によるParlamentskunst, Mohe Siebeck, 2022のような、民主制を美学的aesthethischnな観点から位置付け直す国家美学の領域における先鋭的な研究とも相応するもので、建築と法、演劇と法、法形成システムや国家制度の演劇性・パフォーマンス性に焦点を当てる近年の学際的動向とも連動している。2024年度においては、このような内外の研究者との積極的な意見交換を行うとともに、伝統的な議事空間の意義を議場構造や議事手続との連関を踏まえて捉え直すことを試みる。そのことはまた、議会・議事手続のみならず、裁判所や裁判手続の問題にも波及するはずであるが、可能であればこのような問題領域の拡充に向けた予備的考察も、2024年度の間に行いたい。

次年度使用額が生じた理由

購入すべき複数の海外書籍の刊行が遅延したこと、および一部の国内訪問調査の予定を2024年度に延期したため。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 法案事前評価の改革――立法事実の把握と議会審議の実質化2023

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 雑誌名

      只野雅人編『講座 立憲主義と憲法学 第4巻 統治機構Ⅰ』(信山社、2023年)

      巻: 2023 ページ: 181-206

  • [雑誌論文] 憲法問題としてのオンライン国会ーー研究者側の応答2023

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 雑誌名

      法律時報

      巻: 2023(5) ページ: 10-15

  • [学会発表] 憲法問題としてのオンライン国会2023

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 学会等名
      参議院憲法審査会
    • 招待講演
  • [学会発表] ドイツにおける国家法規監理委員会の機能と課題――議会審議における専門知の反映の一局面2023

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 学会等名
      国立国会図書館立法及び調査考査局研修
    • 招待講演
  • [学会発表] 議会オーラルと議会資料――横路孝弘オーラルの公開に向けて2023

    • 著者名/発表者名
      赤坂幸一
    • 学会等名
      衆議院庶務課日誌研究会
  • [図書] 正副議長経験者に対するオーラル・ヒストリー事業 第 73 代衆議院議長 横路 孝弘(上)2024

    • 著者名/発表者名
      横路孝弘・赤坂幸一・小石川祐介・原口大輔
    • 総ページ数
      428
    • 出版者
      衆議院事務局
    • ISBN
      978-4-911228-04-3
  • [図書] 正副議長経験者に対するオーラル・ヒストリー事業 第 73 代衆議院議長 横路 孝弘(下)2024

    • 著者名/発表者名
      横路孝弘・赤坂幸一・小石川祐介・原口大輔
    • 総ページ数
      436
    • 出版者
      衆議院事務局
    • ISBN
      978-4-911228-05-0

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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