研究課題/領域番号 |
23K01068
|
研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
畠山 亮 龍谷大学, 法学部, 教授 (20411283)
|
研究分担者 |
斎藤 司 龍谷大学, 法学部, 教授 (20432784)
福島 至 龍谷大学, 公私立大学の部局等, フェロー (30208938)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 團藤重光 / 最高裁評議過程 / 團藤文庫 / 團藤事件記録 / 團藤日記 / 大阪空港公害訴訟 |
研究実績の概要 |
本研究は、龍谷大学團藤文庫所蔵の日記、最高裁事件記録、事件ノート等を活用しながら、最高裁判所の評議過程を明らかにすることを目的としている。その審理過程分析に関して並行して進められている日本放送協会(NHK)との共同研究の成果として、2023年4月15日23時からNHK教育テレビジョン(Eテレ)において「ETV特集 誰のための司法か―團藤重光 最高裁・事件ノート」が全国に放映された。この番組では、團藤文庫所蔵の上記資料が一次資料として用いられており、今年度はそこに引き続く形で大阪空港公害訴訟に関する研究から進展していくこととなった。その成果は、『龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報』第13号、2024年所載の「特集『團藤重光研究の新たな展開』」という形で3本の論稿が公表されている。 日記ユニットが、予てより取り組む「團藤日記」第1巻の公刊に向け精度を高める一方で、事件記録ユニットは、最高裁判事時代に團藤が作成した38冊に及ぶ「雑記帳」「主任事件メモ」の翻刻に着手し、大阪空港公害訴訟に係るものを含め第一段階としては大半を終えることができた。そして、その成果を利用した佐藤岩夫による研究報告「大阪空港公害訴訟について」をはじめとして、年間を通じて5回の全体研究会を開催し、事件記録ユニットと日記ユニットそれぞれの活動成果を共有することができた。 また、團藤文庫資料の整理及びその利活用に資するべく、我妻榮記念館、札幌大学図書館、標茶町博物館、博物館網走監獄、月形樺戸博物館、沖縄県公文書館、不屈館などを参観し、各施設の担当者と意見交換を行った。そこで得られた知見の一部は、龍谷大学において開催された「生誕110周年記念特別展『團藤重光の世界-法学者・最高裁判事・宮内庁参与』」に結実し、團藤文庫所蔵資料の高い研究価値を広く社会に発信することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本放送協会(NHK)との共同研究の成果としての「ETV特集 誰のための司法か―團藤重光 最高裁・事件ノート」番組が年度早々に放映に至り、その後も繰り返し再放送されたことは、今年度の研究の起点の一つと位置付けることができる。本研究の基盤たる資料に関しては、まず「團藤日記」については第1巻本文の翻刻作業がほぼ完了し、全体にわたる最終確認や脚注・解題などの完成を残すところまで進めることができた。これと並行して、最高裁判事時代の團藤による38冊に及ぶ「雑記帳」「主任事件メモ」の翻刻に着手し、上記番組に結実する大阪空港公害訴訟に関する詳細なメモを含む大半について、第一段階としての粗起こしまで終えることができた。いずれも、本研究の中で順調な進捗を示すと評することができよう。 新型コロナウイルスの影響も落ち着き、ユニットごとの活動に加えて、全体研究会を年間で5回にわたり全体研究会を開催することができたことは、それぞれの活動成果を共有し全体として研究を進展させる意味で重要であった。また、「生誕110周年記念特別展『團藤重光の世界-法学者・最高裁判事・宮内庁参与』」を開催し、多くの来場者を得たことは、社会還元という点からも評価できよう。この團藤展の開催を含めて、所蔵資料の保存・公開に関しては、我妻榮記念館、札幌大学図書館、不屈館など先人を顕彰し資料を保存・公開する機関や標茶町博物館、博物館網走監獄、月形樺戸博物館、沖縄県公文書館など行刑や訴訟に係る資料を扱う専門機関における調査の実現が大いに奏功したと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、全体研究会を2回程度開催し、「團藤日記」第1巻の本文の翻刻作業を完了させ、最終確認を全員で行うと共に、脚注・解題などについても検討し完成させる。こうして年度前半には公刊原稿の全体を完成させ、既に内定している学内の出版助成を受けて、できるだけ早々の公刊に至るものとする。 最高裁審理の評議過程の研究については、まずは最高裁判事時代の團藤による「雑記帳」「主任事件メモ」全体の粗起こしを完成させ、メンバー全員で共有する。その上で、資料全体の翻刻の精度向上に取り組む一方で、全体研究会において記載内容の確認・分析を行い、大阪空港公害訴訟事件以外の事件を取り上げ、関心に応じてグループないし個人により分析・研究を深化させる。 また、所蔵資料の保存・公開に関して更に見識を深めるべく、もりおか歴史文化館をはじめとして複数の資料館・博物館などへの訪問・ヒアリングを行い、特に資料のデジタル化を通じた研究利用の促進や社会還元に向けた検討を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
謝金の対象となる、最高裁判事時代に團藤が作成した手書き資料(「雑記帳」「主任事件ノート」)の第一次翻刻作業が年度内に完了しなかったことによる。 次年度の早いうちの完了が見込まれており、そこに支出される予定である。
|