研究課題/領域番号 |
23K01072
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
小佐井 良太 福岡大学, 法学部, 教授 (20432841)
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研究分担者 |
松原 英世 甲南大学, 法学部, 教授 (40372726)
河村 有教 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (30403215)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 子どもの死亡事故 / 第三者調査検証委員会 / チャイルド・デス・レビュー(CDR) / 事故予防・再発防止 / 死因究明 |
研究実績の概要 |
研究期間の初年度となる令和5年度は、当初予定した研究計画を踏まえつつ、適宜必要な修正を行う形で以下の研究活動に取り組んだ。 1)子どもの死亡事故、いじめ自死事案を対象とする第三者調査検証委員会・委員経験者2名(学識経験者、弁護士)に対する聴き取り調査を計2回、それぞれ実施した(2023年8月、2024年3月)。調査を通して、第三者調査検証委員会の下で行われる調査検証の困難さや制度運用上の課題等を具体的に確認することができた。 2)子どもの死亡事故調査・検証体制の確立に際して重要な役割を果たす死因究明制度について、沖縄県での実態を調査すべく、琉球大学医学部法医学研究室及び沖縄県警本部を訪問して法医学者並びに検視官に対する聴き取り調査をそれぞれ行った(2024年3月)。調査を通して、他県に比して死体解剖率が高い沖縄県の背景事情を明らかにするとともに、子どもの死亡事故調査・検証体制の確立に際して死因究明体制の拡充が不可欠であることを改めて確認した。 3)CDR(チャイルド・デス・レビュー:予防のための子どもの死亡検証)体制整備モデル事業での多機関・多職種連携による個別検証会議(三重県)にオブザーバーとして参加し、会議内容の傍聴と検証を行った(2023年8月)。情報収集に一定の制約がある中、多機関・多職種連携により死亡検証が行われることの具体的な意義と今後の体制整備に向けた課題の洗い出しを行うことができた。 この他、こども家庭庁科研研究班メンバー・関係者とのCDRの将来的な制度運用に向けた検討会合(2023年12月)への参加や、千葉県子どもの死因究明等の推進に関する研究会(2023年7月)への参加を通じて、研究課題に関して関係者との間で有益な意見交換等を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載の通り、一方で概ね当初予定した研究計画に沿った研究活動を順調に遂行することができているものと判断する。 他方、当初の研究計画について諸般の事情を踏まえて一部必要な見直しを行ったことにより、研究期間全体で取り組む研究内容のうち初年度に着手する順番や内容等を変更している。ただし、このことによる研究の進捗状況に関する影響等は特に生じていない。具体的には、1)公表済みの子どもの死亡事故「調査報告書」の悉皆調査は、2年目以降に取り組むこととしたほか、2)当初予定していたCDR導入国・台湾への海外視察調査に代えて、初年度は沖縄県での死因究明体制の実情等に関する聴き取り調査を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の2年目となる令和6年度は、当初予定していた研究計画の一部について必要な修正・見直しを行った上で、引き続き着実な研究活動に従事する。 研究計画の変更点として、具体的には、令和6年度中にフィンランドにおける死因究明体制の海外視察調査を行う予定である(2024年9月初旬に実施予定)。これについては、当初、CDR導入国の一つである台湾を対象とした海外視察調査を予定していたところ、子どもの死亡事故調査・検証体制の確立に不可欠な死因究明体制の整備・拡充に必要な知見と示唆の獲得を優先すべきであると判断し、研究計画の必要な修正を行ったものである。フィンランドは、充実した死因究明体制の下で高い死体解剖率を有しており、今後、日本でCDRの法制化・導入に向けた議論を進めて行く上でその死因究明体制の実情を視察調査することは非常に有益であると判断した次第である。 以上を当初の研究計画における大きな変更点としつつも、研究期間全体を通した本研究課題の着実な推進の面での支障はなく、より一層充実した研究内容の推進につながるものと判断している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた研究計画の一部を見直したことに伴い、研究期間初年度となる令和5年度は、研究経費の執行を抑制的なものとする方針を採ったことによるものである。 次年度使用額については、研究期間2年目となる令和6年度に実施を予定しているフィンランドへの海外視察調査の必要経費(旅費)にその大部分を充当するなどして適切に執行する予定である。
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