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2023 年度 実施状況報告書

労働関係における人権の法律と裁判による保障に関する日独比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 23K01090
研究機関立命館大学

研究代表者

倉田 原志  立命館大学, 法学部, 教授 (10263352)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード労働関係 / 人権 / ドイツ
研究実績の概要

憲法の人権保障は、歴史的には、国家に対して、制定する法律が人権を侵害しないようにするという消極的な義務を課すということから出発し、依然としてその役割は大きい。しかし、労働関係においては、労働者と使用者とが対等とはいえないことから、労働者を保護するために、国家は積極的に法律を制定して、憲法の人権保障を具体化することが必要となる。そこで、本研究は全体としては、労働関係において人権が法律によってどのように具体化されうるのか、また、法律によって十分具体化されていない場合に裁判所はどのように対応できるのか、についてドイツでの議論を素材として検討するものである。
2023年度は、法律制定の際に指針となると考えられる、ドイツ基本法1条1項が定める人間の尊厳は、どのようなものであり、労働法においてはどのような意味をもっているかの検討をすすめ、連邦労働裁判所の判決のなかで、人間の尊厳がどのように把握されているかを、特にドイツ基本法1条1項が他の条項と結びつけられることなく、単独で適用されている判決を中心に検討した。連邦労働裁判所の判決を含むドイツ労働法理論に大きな影響力をもったとされる連邦労働裁判所初代長官ニッパーダイの人間の尊厳論は、議論の出発点をなすといえるものであること、基本法1条1項だけに依拠した判決は少ないが、ニッパーダイ長官の時代にはニッパーダイの理論が前提とされたものの、それ以降の判決の中ではニッパーダイの論文の引用やニッパーダイ理論を前提とする連邦労働裁判所の判決の引用はないことが明らかにできたと思われる。基本法1条1項の人間の尊厳は、基本法2条1項(人格の自由な発展の権利)や基本法20条1項(社会国家原則)と結びついて多くの議論が展開されており、労働関係における人間の尊厳の検討にあたっては、これらの検討が課題となる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2023年度は、人間の尊厳とならんで、法律制定の際に指針となると考えられる、ドイツ基本法20条・28条が定める社会国家原則についても検討することを予定していたが、人間の尊厳について、憲法学での議論の状況も含めて検討するのに時間を要し、社会国家原則については検討できず、また、人間の尊厳についても、他の条項と結びついた保障についても検討できなかったため。

今後の研究の推進方策

2024年度には、2023年度に検討できなかった事項、つまり、法律制定の指針となると考えられるドイツ基本法20条・28条が定める社会国家原則について検討する。
それに続いて、2024年度の検討予定事項である、労働法の規制緩和が進行していることを踏まえて、労働法の規制緩和に憲法上の限界があるか、あるとすればそれはどこから導かれ、どのような限界かについて検討する。これは、憲法による立法裁量の統制のあり方の検討に位置づけられ、ドイツでの立法裁量と保護義務との関係に関する議論を労働関係に即して検討することとしたい。ドイツでは当該法律が過少保護ではないかを裁判所がどのように判断するかは、いまだ定説がない状態であるので、有期雇用・労働者派遣などの具体的な労働立法に関する連邦憲法裁判所・連邦労働裁判所の判決と学説を検討して、判断の枠組みを明らかにすることを目指す。

次年度使用額が生じた理由

旅費が執行できかなったこと、資料整理等のために人の雇用をしなかったことによる。
資料収集およびインタビューのため、ドイツに行くための旅費を使用することを追求する。また、資料整理等のために謝金等も使用する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 人間の尊厳と連邦労働裁判所-ドイツ基本法1条1項の単独での適用を中心に-2024

    • 著者名/発表者名
      倉田原志
    • 雑誌名

      立命館法学

      巻: 411・412号 ページ: 94-116

    • DOI

      10.34382/0002000752

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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