研究課題/領域番号 |
23K01105
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
愛敬 浩二 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10293490)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | イギリス憲法 / 比較憲法 / 司法権 / 政治的憲法論 |
研究実績の概要 |
研究計画調書にあるとおり、2023年度は「従来の主に左派による司法権批判(機能主義公法学・政治的憲法論)の主張内容を歴史的文脈(政治史・学説史)において理解・評価するための調査・分析」を主な研究課題として、文献研究と現地調査を行った。具体的には、Martin Loughinロンドン政治経済学院教授の著書・論文を出発点として関係文献を収集し、Harold Laski、Ivor Jennings、JAG Griffith等の憲法学説を再読した。また、近年の保守派の政治的憲法論(Juducial Power Project)との比較検討を通じて、左派による司法権批判の歴史的意味と現在の課題を明らかにした。その成果の一部を「イギリスにおける司法権批判の系譜と現在」として公表した。また、Loughin教授が2024年1月に来日して慶応義塾大学でセミナーを開催したので、同セミナーに参加して本研究に関連する質疑を行った。 2023年9月にイギリスに出張して、Keith Ewingロンドン大学キングズ・カレッジ教授やAlan Boggブリストル大学教授等と面会し、従来の左派による司法権批判と戦後イギリスの労働運動・労働法学の関係でついて質疑を行う機会を得た。その成果の一部を「現代イギリスにおける憲法学と労働法学の対話」として公表した。 2024年3月にイギリス憲法研究会がMichael Gordonリバプール大学教授とChirs McCorkindaleストラスクライド大学準教授を招聘して開催した国際セミナーにおいて研究報告を行い、本研究の成果の一部を披露した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」でも述べたとおり、2023年度の研究課題であった「従来の主に左派による司法権批判(機能主義公法学・政治的憲法論)の主張内容を歴史的文脈(政治史・学説史)において理解・評価するための調査・分析」については、一定の文献調査・研究を踏まえた本研究の総論的位置付けとなる論文を公表することができた。また、2023年9月のイギリス調査において、本研究に関わる問題意識について現地の研究者と時間をかけて議論する機会も得た。なお、Alan Bogg教授との質疑を踏まえて、「現代イギリスにおける憲法学と労働法学の対話」というテーマを深める論文の執筆を現在計画中である。この論文を公表すれば、「機能主義公法学・政治的憲法論」による司法権批判の意義や課題に関して、一定の体系性をもって私見を示すことが可能になるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書にあるとおり、2024年度の研究課題は、「現在の主に保守派による司法権批判の主張内容を歴史的文脈において理解・評価するための調査・分析」を行うことにある。年度前半は文献調査と分析を集中的に行い、その研究成果やそこから生じた問題意識を携えて渡英し、現地の研究者と質疑を行う計画である。その際は、公表した関係論文や未公表の研究ノートを英訳して事前に先方に送っておくなど、効率的に現地調査ができるように工夫する予定である。また、研究成果の一部は所属大学の紀要その他の媒体を通じて、積極的に公表していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年9月のイギリス出張について、「ポピュリズム時代における民主主義憲法学の再構築に向けた比較憲法学的研究」(基盤研究(B) 研究代表・本秀紀)の分担金の利用を認められたため。当初の計画では海外調査のための小型パソコンの購入を予定していたが、コロナ以降の航空券及び宿泊料の高騰を考慮して、パソコンの購入を控えていたところ、心配していたほどには渡航費用がかからず、前記の分担金も利用できたため、パソコン購入費用に相当する金額を次年度に繰り越すことになった。
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