• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

消費者脆弱性の制御と消費者法制における努力義務の推進―国際規格ISO22458の観点から

研究課題

研究課題/領域番号 23K01200
研究機関法政大学

研究代表者

菅 富美枝  法政大学, 経済学部, 教授 (50386380)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード消費者脆弱性 / 標準化 / 規格 / ISO22458 / consumer vulnerability / ソフトロー / デジタル脆弱性 / 契約法の基本思想
研究実績の概要

「消費者脆弱性の制御と消費者法制における努力義務の推進―国際規格ISO22458の観点から」と題する本研究課題の遂行にあたって、初年度である2023年度は、翌2024年度に実施予定の半年間にわたる在外での国際共同研究の素地を作るべく、共同研究者や、関係諸機関との連携に力を注いだ。
その過程において、①国際消費法学会での報告に加えて、②国際シンポジウムでのコメント、③国内における専門職(例 消費者問題相談委員、弁護士)向けの講演や研修、④公的諸機関への知識提供(例 消費者庁、日本規格協会)、⑤審議会(例 経済産業省、日本産業標準調査会)への参加、⑥日本規格の策定に関する知識提供(例 エステサービス提供業務に関するJIS化)を行うなど、比較法学的研究の実施のみならず、その成果を、随時、国内に還元することに努めた。
さらに、国内の消費者法改正の動きに呼応して、中でも、サービス契約をめぐる適正化への道筋をつくるべく、ソフトローとしての標準化・規格の法的・社会的意義を強調し、その基本原理を示しうる国際規格として、専門家(例 弁護士、消費者問題相談員)と協力しながら、ISO22458の国内普及に努めた。
また、EU法の動きにも目を向けた。ただし、EU加盟国においては、デジタル社会に対応するための「デジタル脆弱性」に限定されたハードローの制定への関心度が高く、関係すると思われる研究者と意見交換を行ったものの、研究遂行者が有する「消費者脆弱性」をいかなる消費者もが潜在的に有する普遍的概念である捉える姿勢については、一定の理解を得るに留まり共感を得るまでには至らなかった。
これに対して、研究遂行者の20年間に亘る専門対象国であるイングランド及び英国を旧宗主国とするコモンウェルス各国においては、こうした見解については大いに賛同を得ることができ、翌年度の共同研究の素地の確立を実感できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

消費者脆弱性の制御と解消を目指す国際規格ISO22458の国内での社会的浸透について、法曹関係者、消費者団体、官公庁と協力しながら、順調に進めてくることができた。2024年度は半年間の在外研究を予定しており、さらなる展開が期待できる。

今後の研究の推進方策

2024年度は、2023年度中に周到に準備した計画を実行する。すなわち、第一に、2024年4月から7月中旬までは、ウィーン大学に拠点を置き、EUにおけるデジタル取引やデジタルプラットフォーム、AI技術の導入をめぐる規制の必要性について共同研究を実施する。
第二に、7月下旬から9月下旬にかけては、オックスフォード大学に拠点を置き、EU法とは一線を画する、EU離脱後の英国独自の改革路線に着目した研究を遂行する。
いずれの時期においても、2023年度にオックスフォード大学及びケンブリッジ大学で構築した共同研究ネットワークを活かし、ウィーン滞在期間中にあっても、オンラインを利用して、積極的に共同研究を継続する。
また、特に、イギリス法の研究については、研究代表者の20年間に亘る持続的研究対象であることから、EUにおけるデジタル脆弱性をめぐる法改革との比較にとどまらず、デジタル財産への侵害など、不法行為法についても研究領域を広げたいと考えている。
さらには、契約法の背後にある法思想・法哲学について執筆する依頼を受けていることから、実定法の手法にとどまらず、オックスフォード大学及びケンブリッジ大学において伝統的厚みのあるJurisprudenceの手法も取り入れ、研究をさらに深化させていきたいと考えている。本研究との関係では、特に、契約法と市場形成との関係性について、Jurisprudenceなどの基本法学の手法からもたらされる成果は大きいことが期待できる。
以上の学問的成果については、随時、国内の実務家や企業関係者たちにも情報発信していきたいと考えている。2024年度も昨年度と同様、審議会委員や法曹関係者、民間企業従事者との交流を通して、日本社会に適用しうる学問的理論の探求を心掛けたい。

次年度使用額が生じた理由

2024年度4月26日から7月13日まで実施予定のウィーンを拠点とした調査に関連して宿泊先の契約を2023年度中に行う必要があったため、前倒し請求を行った。ただ、実際には、支払いが3回に分けられることとなり、第一期支払いは2023年度に済ませたものの、第二期と第三期については、年度をまたぐ形となった(2024年5月及び6月の予定)。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] オックスフォード大学/ケンブリッジ大学/ロンドン大学(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      オックスフォード大学/ケンブリッジ大学/ロンドン大学
  • [国際共同研究] フランクフルト応用科学大学/ケルン応用科学大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      フランクフルト応用科学大学/ケルン応用科学大学
  • [国際共同研究] マーストリヒト大学(オランダ)

    • 国名
      オランダ
    • 外国機関名
      マーストリヒト大学
  • [国際共同研究] ヴァレーゼ大学(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      ヴァレーゼ大学
  • [雑誌論文] 現代社会において「標準化」が有する役割2023

    • 著者名/発表者名
      菅富美枝
    • 雑誌名

      民事法務

      巻: 414 ページ: 3,8

  • [雑誌論文] 「つけ込み」行為の制御と意思決定の自律性の確保2023

    • 著者名/発表者名
      菅富美枝
    • 雑誌名

      ジュリスト

      巻: 1585 ページ: 21,27

  • [学会発表] Not Incapacitation But Inclusion! What we can learn from the ISO 22458, “Consumer Vulnerability: Requirements and Guidelines for the Design and Delivery of Inclusive Service” for reforming Japanese Consumer Law2023

    • 著者名/発表者名
      Fumie Suga
    • 学会等名
      International Asociation of Consumer Law(国際消費者法学会)
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi