研究課題/領域番号 |
23K01203
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
青木 則幸 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30350416)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 担保法 / アメリカ法 / 比較法 / ファクターズ・リーエン / UCC第9編 |
研究実績の概要 |
動産物権変動の対抗関係の規律における公示の役割について、日米の立法の比較を試みるのが当研究のゴールである。 本年度は、米国のファクターズ・リーエンの類型に注目し、その対抗関係の規範を分析した。分析結果は次の通りである。 ファクターズ・リーエンは、ファクターと呼ばれる担保権者SPのために、設定者Dによって設定された、商品上の担保権である。沿革は、商品供給者から商品の委託販売を請け負う問屋が目的物上に取得した法定リーエンであるが、次第に、販売による代金収入の前貸しを行うようになり、やがて、目的物の引渡しを受けず商品供給者の倉庫に保管せしめたまま、また、供給者自身による売却処分を認める形の担保取引へと発展していった。しかし、このような取引類型の発展は、動産非占有型担保権について目的物の処分授権を禁じる動産モーゲージ法の規律と衝突することになる。この衝突を解消すべく立法されたのが、1911年に制定された人的財産法第45条(Personal Property Law§45)である。現在のUCC第9編に承継されているいわゆる「ノーティス・ファイル」型の登記制度をはじめて導入した立法にあたる。いわゆるファクターズ・リーエン法は、動産非占有型担保権の処分授権の禁止を緩和し、設定者による目的物処分の結果生じる法的諸問題の問題提起をする役割を果たしたといえる。しかし、対抗関係の一般規範そのものは、多分に動産モーゲージ法の対抗関係の規範に依拠していた。このように、「ノーティス・ファイリング」型登記制度は、その誕生の瞬間から、現在のUCC第9編におけるような機能をすべて担わされていたわけではなかったのである。 以上の検討は、20世紀半ばに廃止された法制度についての研究であり、主に文献の分析によった。しかし、科研費を使用し、米国の専門家との意見交換を行うことで、分析の客観性を高めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定どおりに研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
次の検討対象類型として、トラスト・レシート取引を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の使用額は、ほとんどが、10月に実施した海外調査の費用である。次年度も同様の海外調査を予定しているが、円安と比較対象国である米国の物価高の進行がすさまじく、本年度と同程度の調査を行うと、次年度の交付額では不足する可能性が大きい。当研究にとって、海外調査とくに聞き取り調査による研究成果の客観性の担保は極めて重要な要素であるため、不急の使用を控え、次年度の海外調査費用で使用する予定である。
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