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2023 年度 実施状況報告書

個人支配体制の成立と変容:ロシア・ベラルーシ・カザフスタン

研究課題

研究課題/領域番号 23K01237
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

大串 敦  慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (20431348)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワードロシア / 政治体制 / 戦時体制 / 個人支配
研究実績の概要

本研究課題は、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン三国の個人支配体制の成立と展開を考察するものである。1年目であった本年度はロシアを中心に調査と考察を行い、雑誌論文1本、書籍での章担当の論文3本、国際学会報告1本が研究成果であった。雑誌論文は、ロシア・ウクライナ戦争下におけるプーチンの戦時体制を考察したもので、戦時下においてもロシアは社会的な統制も緩く、限定的な動員しか行わない「低動員の戦時体制」を形成したことを論じた。戦時下のロシア政治は、西側報道では綻びばかりが論じられる傾向にあるが、これはある程度強靭性があり、希望的な観測に浸らずに冷徹に認識する必要があるとの含意も本稿にはある。
国際学会報告とロシアの個人支配体制を論じた書籍所収論文は、西側の民主化促進政策やNATO拡大がロシアの指導部に安全保障恐怖と「民主化革命」を策謀ととらえる考え方植え付け、ロシアの個人支配型の権威主義体制の成立に影響を及ぼしたことを論じた。
また、ロシア政治のテキストにおいて、議会政治を概観した。ロシアの議会はしばしば政府などが提出する法案を即時に採択するだけの「ラバー・スタンプ」であるといわれるが、にもかかわらず社会的な利害や省庁間対立などにより、議会の場で法案修正が行われていることを指摘した。


なお、ロシアの政治体制を考察するうえで、しばしば比較対象になるウクライナ政治に関して、独立後のウクライナ政治を概観し、ロシア・ウクライナ戦争下の戦時体制の成立までを論じた書籍所収論文を執筆した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ロシアの政治体制に関して、今年度のみで3本の論文を公刊し、国際学会で報告を1回行った。初年度としては量的に順調な成果といえる。内容に関しては、イギリスでの報告は聴衆からかなり好意的なフィードバックを得ることができた。また、雑誌論文は、ロシアの現行の戦時体制に関して、西側報道ではきわめて多くの綻びや限界が指摘されてきたが、この体制がかなりの程度強靭であると論じた。いずれも、一般的な西側のロシア認識に一定の修正を求める内容になっている。
強いて言うと、英語での研究成果の発信が若干おろそかになったので、二年目はベラルーシでの調査・研究報告とともに、外国語での研究発信を行っていきたい。

今後の研究の推進方策

二年目は、研究計画通り、ベラルーシのルカシェンコ体制の調査を中心に行う。もっとも言うまでもなく、ルカシェンコ体制の持続は、従来から、ロシアによる経済的な支援(低価格でのガス供給)に依存している度合いが大きい。また、2020年の大統領選挙に際して大規模な反対デモに直面して以来、ロシア依存は高まっていると考えられる。引き続きロシアの調査も継続しつつベラルーシを考察することになろう。ベラルーシ政治はわが国でも諸外国でも研究の蓄積が少ない分野である。本研究が一つの呼び水になればと考えている。

次年度使用額が生じた理由

おおむね計画通り執行したが、年度末ごろに発売の洋書がいつ頃入手できるか不明だったため、若干余らせておいた。未執行額は少額なので、書籍やフィールドワークの際に使用する。
2年目は、計画通り、ベラルーシを中心に調査・研究報告を行う。フィールドワークに加え、書籍等の購入が研究費執行の中心となる。加えて、学会報告のための出張費にも利用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 低動員の戦時体制:ロシア・ウクライナ戦争下のプーチン体制2024

    • 著者名/発表者名
      大串敦
    • 雑誌名

      国際問題

      巻: 717 ページ: 5-15

  • [学会発表] The International Origins of the Deeply Personalised Russian Political Regime'2023

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Ogushi
    • 学会等名
      British Association for Slavonic and East European Studies (BASEES)
    • 国際学会
  • [図書] 民主主義は甦るのか?2024

    • 著者名/発表者名
      細谷雄一、板橋拓己、水島治郎、山本みずき、高橋義彦、長野晃、五百旗頭薫、村井良太、竹中治堅、藤原一樹、大串敦、ジョン・ニルソン=ライト
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会
    • ISBN
      978-4-7664-2946-6
  • [図書] ロシア・ウクライナ戦争 : 歴史・民族・政治から考える2023

    • 著者名/発表者名
      塩川伸明、松里公孝、大串敦、浜由樹子、遠藤誠治
    • 総ページ数
      376
    • 出版者
      東京堂出版
    • ISBN
      9784490210910
  • [図書] 現代ロシア政治2023

    • 著者名/発表者名
      油本真理、溝口修平、河本和子、松嵜英也、長谷川雄之、立石洋子、大串敦、安達祐子、富樫耕介、長嶋徹、高橋沙奈美、藤澤潤、加藤美保子、長谷直哉、岡田美保、小泉悠
    • 総ページ数
      262
    • 出版者
      法律文化社

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公開日: 2024-12-25  

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