研究課題/領域番号 |
23K01257
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
板谷 大世 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (80264919)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 執政制度 / 議院内閣制 / 選挙制度 / 小選挙区制 / 権力の融合 / 人民行動党 / 幹部党員 |
研究実績の概要 |
・2023年度は国内で入手可能な文献研究と、シンガポールでの現地調査で収集した資料の分析に重点をおいた研究を進めた。前者に関しては執政制度、選挙制度、そしてこうした制度が同国の政党組織に与える影響について理論的考察を進めた。具体的には、それぞれの制度の一般的な理論的考察を行った上で、執政制度についてはシンガポールで採用されている議院内閣制、それから選挙制度でも同じく小選挙区制を採用することによって生じる政治的インパクトに関する考察を深めた。その上で、議院内閣制と小選挙区制が組み合わさった時に生じやすい「権力の融合」について文献の収集と分析を進めた。そして、実際にこれらの制度が英国、米国、日本などで活動する政党組織にどのような影響を与えるかについての研究を進めた。また、これらの制度がシンガポールで活動する政党組織に与える影響についても、予備的な考察の準備を始めた。 ・こうした理論的考察を踏まえて、9月にはシンガポールにて現地調査を行った。現地では植民地時代の議会議事録や官報を参照しながら、同国における選挙制度の変遷に関する資料を集めた。また現地の研究者と意見交換をし、本研究計画の分析手法に対して意見を求めた。その結果、本研究計画は、従来研究で一般的である政権与党の活動から同国政治の安定を分析する研究を補完するものであるという自信を深めた。 ・本研究に関連して考察を深めた点として、20年ぶりに行われるシンガポールの首相交代がある。新たに首相に就任する人物は、やがて与党の最高権力者となることが予想されるが、この人物が新首相に選出された背景を理解するためにも、本研究が分析対象としているシンガポールの与党が持つ政党組織の特徴に対する理解を深めることが重要であると再認識した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、2023年度にシンガポールと英国での現地調査を予定していたが、シンガポールでの調査しか実施できなかった。その理由としては、理論面での考察に時間を取られてしまい、シンガポールの政治状況に関する考察に十分な時間が取れなかったためである。また、シンガポールでは20年ぶりの首相交代が発表されるなど、現代のシンガポール政治の情勢分析に時間がかかり、英国の文書館で収集する予定だった1940年代から1950年代にかけてのシンガポール政治に関する調査計画について十分に準備が進められなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究計画に従って研究を進める。今年度は昨年度見送ったロンドンでの資料調査を実施する。また、これまでに得られた知見をまとめて発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に計画していた英国での調査旅行を行わなかったため。繰り越した助成金は本年度の英国での調査旅行として執行する予定。
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