研究実績の概要 |
本科研の申請当初は経済財政分野を中心とする中国の有力地域大国へのアプローチに焦点を当てる予定であったが、インドで7月と9月に聞き取り調査を実施したところ、インド政府が2020年6月に生じた北部ラダック地区ガルワン渓谷での中国軍との衝突を含む断続的な小競り合いを深刻に懸念し、中国が軍事プレゼンスを後退させるまで中国との二国間・多国間関係を発展させないとの外交姿勢を堅持していることが分かった。かつてAIIBやBRICS開発銀行の創設時にみられた中印の経済協力を国境紛争が大きく阻害していることが判明したため、本研究はまず中印国境の緊張関係の分析から研究に着手した。 7月と9月にニュー・デリーで聞き取り調査を実施したところ、(1)対中警戒論が幅広く有識者に共有されていること、(2)国境地帯で中国側を抑止することがインド外交の焦点であり、そのために日米豪との二国間協力やQUADの発展に幅広い支持があることが分かった。 中国側については、インドで中国による一方的なエスカレーションとして理解されている、2021年の陸地国界法制定の背景と内容を検討した。その結果、インドを狙った中国の布石としてインドで警戒される陸地国界法の制定では、習近平への権力集中という中国内政が大きな役割を果たしていることが分かった。
・Sakabe-Mori Aki, "The National Land Boundary Law of the People's Republic of China as Part of Domestic Politics in China", China-Taiwan Study Group, Commentary No.1. Feburary 16, 2024, https://npi.or.jp/en/research/2024/02/16173000.html
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