研究課題/領域番号 |
23K01453
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
唐 成 中央大学, 経済学部, 教授 (20424187)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | デジタル金融 / 家計負債 |
研究実績の概要 |
近年の中国では、成長率の鈍化とゼロコロナ政策により、政府や企業とともに、家計負債問題が顕在化し、金融リスクが高まっている。他方、FinTechの進歩とEC市場の拡大を背景として、中国のデジタル金融が急速に発展してきた。デジタル金融の普及は金融包摂を拡大すると同時に、家計負債の急増に影響を及ぼしているのだろうか。このような問題意識のもと、本研究では、全国規模のミクロ・データベース中国家計金融調査CHFSを構築したうえで、デジタル金融の普及は家計負債行動にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするものである。 科研費研究の初年度となる本年度(2023年度)は、中国家計負債に関するマクロ統計の収集およびミクロデータの整理を行うと主に、中国の家計負債行動に関する最新の研究資料の集計に努めてきた。その際、日本語や英語文献のみならず、中国国内で刊行される有力な学術誌の論文・研究書などを広範囲に行い、中国の家計負債の現状と直面する課題について検討を進めてきた。また本科研費研究では、中国での現地調査は2024年度に実施する予定であるから、本年度はその現地の調査の可能性などについてオンラインシステムやメールなどを利用して、中国家計金融調査センターや研究協力者との間で意見交換を進めてきた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度(2023年)は、代表者が在外研究のため、中国への訪問と現地協力者との面談での協議や、都市及び農村での現地ヒアリング調査の実施することが出来なかった。その一方で、中国における家計負債とデジタル金融に関する最新の研究資料と統計データの集計に務めるとともに、中国側の現地協力者や西南財経大学中国家計金融調査研究センターの研究者ら等とオンラインで連絡を密に取りながら、本科研の調査内容や分析枠組みに関する協議を行ってきた。
上の理由から、「(2)おおむね順調に進展している」と評価することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
中国におけるデジタル金融の深化という視点による家計負債の急増問題やそのメカニズムへの解明が必要で不可欠である。本科研費研究では、このような問題意識のもと、デジタル金融の深化という点に着目し、パネルデータによる家計負債の時系列的な変化とその特徴を捉えた上で、デジタル金融の発展が家計にとって、新たな負債問題として、どのような影響を及ぼしているのかを明らかにし、デジタル金融が家計負債を拡大させるメカニズムは何か、さらに家計の異質性を解明することが主たる目的とすることである。この目的を達成するため、本年度(2023年度)に引き続き、2024年度もデジタル金融及び家計負債に関する情報収集を行う。そして現地協力者と密に連絡を取りながら、都市部および農村部での現地調査を実施する。このような事前準備を踏まえたうえで、2024年度にデータ構築やモデル構築・実証分析に向けた準備を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度(2023年度)は、中国の家計負債とデジタル金融に関する最新の研究資料と最新のミクロデータの収集を集中的に実施する予定であった。しかしながら、代表者が在外研究のため、現地調査の実施、最新のミクロデータの購入や研究書・統計書の一部に関して、入手面での制限がかかってしまい、次年度使用額が発生することとなった。 現状では(2024年4月)、次年度(2024年度)以降に実施する予定の現地調査と中国出張の旅費として使用する予定である。対人民元の日本円の為替レートが下落していることも、データ購入費や現地調査費用と旅費の一層の上昇をもたらしている。したがって、前年度の予算残り分をそれらの調査関連費用の上昇分に充当していく。
|