研究実績の概要 |
今年度は先行研究および関連研究のサーベイと、データの整備を行った。先行研究については、Nakamura (2023, Japan and the World Economy 66, 101188) が60年間に及ぶゾンビ企業の推定を行っていることがわかった。本研究もこれを検討していたため、この点での新規性は失われてしまった。他方で、マクロ的な影響を測ることについては別の分野でいくつかの関連研究が見つかった。Guerrieri and Harkrader (2021, Economics Letters 204, 109884) は、銀行のパフォーマンスをミクロ要因とマクロ要因とに分割して推定した。その結果、銀行のパフォーマンスにおけるマクロ経済環境の重要性が明らかとなった。Duan and Jijun Niu (2023, Applied Economics Letters 2211328) は銀行の流動性創出を同様にミクロ要因とマクロ要因とに分割した。推定の結果、銀行の流動性創出に関してもマクロ経済要因が重要な役割を果たしていることがわかった。これらの結果は、ゾンビ企業の発生要因についてもマクロ経済環境の影響力の大きさを示唆するものとなっている。 これらを参考にして、同様の手法を本研究に活かせるよう考えている。具体的には、主成分分析を応用して、マクロ経済的な影響を抽出し、ミクロ経済的な影響と区分するというものである。ただし、問題は、ゾンビ企業の場合、ゾンビ企業なら1、そうでなければ0というようなダミー変数を利用することが多く、先行研究で行われているような連続変数とは異なる点である。これをどう克服するかは今後考えていく。 データについては、日本政策投資銀行の「企業財務データバンク」から入手することができた。分析に必要な変数を作成し、データクリーニングを行っている最中である。
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