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2023 年度 実施状況報告書

金融グローバル化とデジタル化の進むアフリカで、地域統合にメリットはあるか?

研究課題

研究課題/領域番号 23K01479
研究機関甲南大学

研究代表者

杉本 喜美子  甲南大学, マネジメント創造学部, 教授 (70351434)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
キーワード金融統合 / デジタル化 / 共通通貨 / 経済成長 / アフリカ
研究実績の概要

2023年9月に2週間、フランスSciences Po. Aixに招聘教授として滞在し、開発経済学の授業を担当するとともに、共同研究を進めることができた。その結果、Gilles Dufrenot教授との共同論文2編を、11月に発刊された本“Topical Issues in International Development and Economics”の12章および16章として掲載することが出来た。
12章では、確率フロンティア生産関数の推計およびパネル分位点回帰を行うことで、地域間・国間の不均質な生産性格差を明らかにした。結果として、サブサハラアフリカ諸国の多くが、人口増加が労働生産性の非効率をもたらす状況に陥り、人口ボーナスを享受できていないことを示した。
16章では、同様の手法を用いて金融のグローバル化と生産性の関係を分析した。国際金融統合は、アフリカ諸国の生産性向上を通して生活水準を上げることもあれば、低下させてしまうこともあり、国によって大きく異なることを示した。
また、2024年にエジプトやエチオピアなど新規加盟国を加えたBRICSが、「グローバル・サウス」の軸として、既存の制度に対抗しうる新たな主体として、持続可能な経済・金融連合を形成できるのか?を、為替レートのミスアライメントの視点から実証分析する検討を始めることができた。
加えて、西アフリカ15ヵ国を含む地域共通通貨の将来的導入に向け、具体的工程(貿易/投資/金融)の選択は適切かに関して、中央銀行デジタル通貨の要素を含めて実証し始めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請当初に掲げた目標のうち、1)各国固有の経済構造と制度をもつ多様なアフリカにおいて、金融グローバル化がアフリカ各国の生産性と貧困削減にどう影響を与えるか、に関しては本の1章として出版できた。
2)西アフリカ15ヵ国を含む地域共通通貨の将来的導入に向けて、具体的工程(貿易/投資/金融)の選択は適切か、に関しては、データを集めて、実証をはじめている。
3)モバイル決済/暗号通貨/中央銀行デジタル通貨(CBDC)など、金融のデジタル化は金融包摂(Financial Inclusion)を促進し、経済格差を是正しうるか、に関しては、実証分析はまだ始めていないものの、アフリカで広がる新しい金融デジタルサービスをサーベイし、金融包摂に関するフィンテックの未来(R. Sahay et al. 2020, IMF)やアフリカにおけるCBDC(E. Alberola and I. Mattei, 2022, BIS)の論文をもとに、デジタル化のデータを探している。
4)金融グローバル化が経済成長を促進させるために必要な国内金融発展の程度、に関しては、デジタル要因も加えた実証分析を行っているものの、結果の頑強性の点で問題があり、査読雑誌への投稿までに再検討が必要である。

今後の研究の推進方策

2023年9月に渡仏した際、あわせてスペイン・バレンシアで開催された国際金融統合に関する学会にも参加し、金融のグローバル化、デジタル化に関する様々な最新の研究を学ぶことができた。共同研究は、引き続きオンラインで進めることができており、2024年9月に開催予定の日仏共同学会(French/Japanese Conference on Asian and International Economies in an Era of Globalization)において、研究成果(2024年にエジプトやエチオピアなど新規加盟国を加えたBRICSが、持続可能な経済・金融連合を形成できるのか?)を発表し、国際雑誌への投稿へとつなげるよう今後も努める。
2024年度は、金融グローバル化とデジタル化がアフリカでどの程度進んでいるのか、デジタル化指数を探すとともに、各国/地域の所得格差を減らして金融包摂を促進しているのか、現状をデータから確認する。アフリカにおける金融グローバル化とデジタル化は、貿易や投資の視点で、どの国とより深い経済関係を結ぶことで進んでいるのか、実情を認識するとともに、今後の望ましい方向性に関しても、データを用いて総括する。

次年度使用額が生じた理由

発表や討論者依頼を受けていた国際学会/ワークショップの一部が、ハイブリッド開催となったことから、オンライン参加により旅費が不要となったため。国際機関でない民間データも充実していることから、こうしたデータ購入を検討するとともに、2024年度9月に予定している国際ワークショップの参加に充てたいと考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 図書 (2件)

  • [国際共同研究] Sciences Po. Aix(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Sciences Po. Aix
  • [図書] Topical Issues in International Development and Economics(Ch12: Productivity Gaps in the Developing World: An International Comparison, pp. 344-387)2023

    • 著者名/発表者名
      Desire Avom and Gilles Dufrenot (Ch12: Gilles Dufrenot, Sitraka Forler, Hadiza Mahaman and Kimiko Sugimoto)
    • 総ページ数
      587
    • 出版者
      Cambridge Scholars Publishing
    • ISBN
      978-1-5275-5387-3
  • [図書] Topical Issues in International Development and Economics(Ch16: Does International Financial Integration Increase the Standard of Living in Africa? A Frontier Approach, pp. 486-521)2023

    • 著者名/発表者名
      Desire Avom and Gilles Dufrenot (Ch16: Gilles Dufrenot and Kimiko Sugimoto)
    • 総ページ数
      587
    • 出版者
      Cambridge Scholars Publishing
    • ISBN
      978-1-5275-5387-3

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公開日: 2024-12-25  

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