研究課題/領域番号 |
23K01491
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
橋本 理博 愛知学院大学, 商学部, 准教授 (10735913)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | アムステルダム銀行 / 決済システム / ネットワーク構造 / 預金通貨 |
研究実績の概要 |
17世紀初頭のアムステルダムでは、商人たちに安定した決済環境を提供することを目的に振替銀行(アムステルダム銀行)が設立された。その後、アムステルダムでは17世紀後半にかけて同行を中心に金融制度が整備されるのと並行して、マーチャント・バンカーが台頭し、彼らは引受信用を提供するようになる。これにより、各地からアムステルダム宛為替手形が振り出され、最終的にそれら手形がアムステルダム銀行の預金振替で決済されるという構造が生まれる。 本研究では、アムステルダム銀行の口座保有者である商人・商社・金融業者間で形成されていた決済ネットワークの構造を解明し、17~18世紀におけるヨーロッパの経済構造と、その中で同行の預金通貨(バンク・マネー)が果たした役割を明らかにする。具体的には、ネットワーク構造を解明するため、アムステルダム銀行の帳簿資料からデータセットを構築して分析を行う。また、同行がネットワークを支える基盤となりえた要因や、商人たちの活動内容も文献資料等を活用して検討する。 2023年度(本研究課題の1年目)の研究では、①ネットワーク構造を分析するための準備段階として、アムステルダム銀行の帳簿資料から得られる口座情報をもとにデータセットを構築する作業を進めた。②なぜアムステルダム銀行のバンク・マネーが国際的な決済を遂行しえたのかを考察した。この考察から、バンク・マネーの価値を捉える場合には、その「安定性」とバンク・マネーそのものの「不変性」とは区別する必要があるとの知見を得た。バンク・マネーが国際的な決済を遂行しえたのは、その不変的な性格によるものと考えられる。③アムステルダム銀行に口座を保有して金融業を営むマーチャント・バンカーによる引受信用の構造と、彼らの活動内容を整理した。②と③の成果は2024年度中の公表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データセットの構築が当初の予定より遅れている。入力作業を進めてはいるが、扱う情報量が大規模であり、その整理と入力に時間を要しているためである。
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今後の研究の推進方策 |
量的分析を行うためのデータセットの構築を今後も進める。分析の対象なる時期を区分して、分析可能となった時期のデータから予備的分析を行う。これと並行して、他の時期についてもデータ入力を進め、最終年度には全体の分析が行えるよう準備を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では初年度にオランダでの現地調査を行う予定であったが、データセット構築を優先した結果、現地調査の実施を見送らざるを得なかった。次年度では現地調査や文献資料の購入に充てる予定である。
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