研究課題/領域番号 |
23K01527
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山縣 正幸 近畿大学, 経営学部, 教授 (20368591)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | アントレプレナーシップ / 美学 / 詩学 / 企業者的想像力 / 企業者的過程 |
研究実績の概要 |
2023年6月には組織学会研究発表大会において「アントレプレナーシップへの美学的/詩学的アプローチの可能性」と題して、本研究にもとづく学会報告を実施することができた。ここでは、アントレプレナーシップ研究において、美学や詩学といったアプローチを採る研究についてのレビューをおこない、それらの意義や志向性について考察するとともに、そこから見出される将来的な可能性について明らかにした。本報告に際しては、フロアから複数の質問コメントを受けることができ、さらなる研究に向けた論点や方向性を見出すことができた。とりわけ、ロマン主義的な考え方の重要性や意義についての質問が複数出され、この点に関する考察が必要となることが浮き彫りになったのは、本報告の成果の一つである。
また、本研究の一環としてマンズィーニ著『ここちよい近さがまちを変える : ケアとデジタルによる近接のデザイン』の翻訳に共訳メンバーの一人として参加するとともに、本研究に立脚した研究成果をともなう解題文の執筆ならびに成果報告の機会を得ることができた。ここでは、他者への想像力に立脚したエコシステムの形成の重要性が浮上した。原著にはアントレプレナーシップの重要性への言及はなかったが、ケアを基盤におくエコシステムの形成に際しては、アントレプレナーシップが重要な意味を持ってくることも考察のなかから知見として得ることができた。
このほかにも、実際のアントレプレナー/経営者にインタビュー調査を実施することができた。この点は報告や論文にはまだ反映されていないが、本研究にとって有益な質的データを得ることができた。この点については、2024年度以降もさらに継続し、分析段階に進みたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の2023年度において、学会報告1件と翻訳(共訳)刊行1件をおこなうことができた。学会報告においては、アントレプレナーシップをめぐる美学的/詩学的アプローチの展開と可能性について報告をおこない、フロアからも有益な質問やコメントをいただいて、本テーマの将来的な発展可能性を確認することができた。一方で、アントレプレナーシップ研究と美学、さらに詩学というそれぞれに蓄積の多い領域を架橋する研究であることも、あらためて明瞭になった。それゆえ、それぞれについての学史的考察が欠かせないことも研究すべき点として浮かび上がってきた。そのための文献収集をおこなうことができた。これらの文献に立脚した学史的考察は、2024年度以降の課題である。
また、何人かのアントレプレナーにインタビュー調査を実施することができた。この点に関しては初年度として必要な調査を行いえたが、なお足りない部分もある。これについて2024年度以降に、さらなる調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度におこなった学会報告にもとづく考察を論文化することが、2024年度以降の大きなポイントになる。2023年度の研究を通じて、アントレプレナーシップ研究、美学ないし詩学の研究それぞれの蓄積の厚さを整理することの重要性が明白となった。この点については、2024年度にあらためて考察をおこない、論文化を進めたい。
さらに、2023年度にも実施した実際のアントレプレナーへのインタビュー調査をさらに拡充し、企業者的想像力の実践的展開について質的データの収集に努めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
事前に想定していた謝金に関しては、インタビュー先が謝金不要の旨を表明されたため、実支出として発生しなかった。また、その他の項目に関しても、予定していた支出が発生しなかったために0円となった。これらに関しては、2024年度以降の研究において支出が生じる可能性がある。
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