研究課題/領域番号 |
23K01533
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡辺 周 大阪大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (90754408)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 経営戦略論 / 経営組織論 / 事業の再構築 / リストラクチャリング / 経営者交代 / 組織の〈重さ〉 / 戦略変更 / トップ・マネジメント・チーム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,事業の再構築と組織要因について,理論的・実証的に検討することにある.より具体的には,事業再構築として,戦略変更の側面や,新市場への参入と既存事業からの撤退の側面,事業再構築に伴う減損損失の計上など多様な側面に注目して研究を行っている. 本年度の主な研究成果は,新規事業立ち上げと既存製品カテゴリーからの撤退の際にかかる調整労力の問題を明らかにした点にある.分析にあたっては,組織の〈重さ〉調査のデータを利用した.組織の〈重さ〉とは,戦略の実行や組織内の調整活動を阻害する組織劣化の程度のことを指す.本研究でも,組織の〈重さ〉が重たいほど,組織の成果は低く,また組織内の調整に過度な時間がかかっていることが確認された.本研究ではさらに,組織の〈重さ〉と組織要因の関係を分析し,以下のことを再確認している.(1)全社や事業部などの計画が組織内で良く参照されているほど,(2)予算や計画から各人に具体的な目標が明確にブレイクダウンされているほど,(3)予算や業績目標の達成と昇進・昇給が明確に結びついているほど,組織は軽い傾向が見られる.さらに,組織内で情報が公式のルートを経由して伝わっているほど,組織の〈重さ〉は低い傾向が見られる.この研究成果は,加藤俊彦・佐々木将人編著『「行為の経営学」の新展開:因果メカニズムの解明がひらく研究の可能性』白桃書房の第5章「組織の〈重さ〉:全7回の調査からの知見」として発表している. それ以外の本年度は,事業の再構築を含む企業の意思決定に対して,組織の中でも経営者と社外取締役がどのように影響を与えるのかの理論的な検討を行った.これは既に前年度までに投稿を済ませていた論文に対して,査読者からコメントを頂戴したため,それに対応するかたちで,改めて再検討を行ったものである.この研究成果は,『日本経営学会誌』に査読付論文として公表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の3点から,当初の計画以上に進展していると自己評価している. 第1に,「研究実績の概要」欄に記載した通り,初年度の間に,査読付論文1本,書籍収録論文1本が公表されている. 第2に,上記のような業績を発表する段階には至っていないものの,一定の知見を得られた分析について,学内外のセミナー・ワークショップで発表を行っている.具体的には,所属大学の全学の研究交流セミナー(2023年10月27日)と,部局の教員研究会(2024年3月14日),他大学での公開講演会(武蔵野大学第32回有明経営サロン,2024年2月16日),Academy of Management JournalのPaper & Idea Development Workshop(2023年4月15日)の計4回の発表を今年度は行った.これらはそれ自体が具体的な成果と呼べるわけではないものの,分析結果が得られた研究に対して,フィードバックを受けられたことで,論文として投稿するための軌道修正や準備が的確に進められている. 第3に,国際共同研究においても進捗がある.リバプール大学マネジメントスクールのWu, Shubin先生と2023年度の頭より共同研究の話し合いを行い,そこからインターネットでやりとりを重ねている他,2度,Wu先生が大阪に来る形で対面でのやりとりを行い,さらに2024年3月には今度は私がリバプール大を訪問して連日集中的に討議を行い,共同研究のアイデアが形になりつつある.またリバプール大では,他にも3人の先生と個別面談を行い,本研究課題に関するコメントを受けたり,本研究を展開するアイデアについて相談をしたり,融合領域における査読対応に関する議論を行ったりした. 以上の通り,具体的な研究成果発表の点ではもちろんだが,投稿直前の研究においても,その前段階の研究においても,当初の計画以上に研究が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要欄,および現在までの進捗状況欄に記載した通り,現在のところ,当初の計画以上に進展させることが出来ている.そのため,今後も,研究計画を出来る限り前倒しで進めていく. また,今後の研究を進める際には,これまで以上に,研究成果を査読付論文として公刊することと,国際発信することを目標とした活動を行っていきたい.上述の通り,昨年度は海外雑誌のペーパーデベロップメントワークショップに参加し,そこからは有益な学びとフィードバックが得られた.また海外の大学に短期間滞在した際も同様であった.そのため本年度も,少人数のペーパーデベロップメントワークショップへ参加することと,海外の大学に1週間から10日ほど短期滞在し個別面談を繰り返すことをしていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる理由は,所属組織において使途の定めのない競争的資金(単年度の補助金)が得られたため,研究補助員の雇用経費など本研究の遂行に必要な経費のうち一部分をそちらから支出することにしたためである.次年度においては,当初の計画より研究が前倒しで進んでいることにより,英文校閲費用がより多くかかる可能性があるため,残額はその費用に充てる予定である.また同様の理由から,国内外の学会への出張旅費や,査読に対応する際に追加的なデータの収集・コーディング作業を行う際の作業補助者への謝金などもより多くかかる可能性があるため,それらが生じた際には,次年度の当初の予算額と合わせて本年度の残額を使用する予定である.
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