研究課題/領域番号 |
23K01686
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
齋藤 雅子 関西大学, 総合情報学部, 教授 (00434788)
|
研究分担者 |
河合 由佳理 駒澤大学, 経営学部, 教授 (20584501)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
キーワード | 会計教育 / 国際会計 / IFRS / 簿記 / 人材育成 / 会計離れ |
研究実績の概要 |
本研究は、既存研究との差別化をはかり、会計不正抑止を念頭においた経済のグローバル化、DX化に求められる多元的な人材育成を目指している。研究初年度(令和5年度)の研究成果として、日本簿記学会第39回全国大会統一論題報告を経て、雑誌『産業経理』での刊行に至った論文1点を中心に取り上げ、以下で説明する。企業の経営状況を可視化するための国際的な尺度となる国際財務報告基準(IFRS)を適用する企業がわが国で増加するにつれ、IFRSの知識醸成がより重要性を増している点を背景に、同論文は大学の国際会計の講義において簿記をすでに学習している上位学年を対象に実施した調査をもとに分析および考察を行ったものである。国際会計の授業内容や学習者の簿記会計に対する意識を関連づけて取り上げ、検討する狙いは、本研究が目指す経済発展と社会的課題の解決を両立する次世代のイノベーション人材育成に向けて、簿記の技術や基礎理論、会計基準を中心とする大学における会計教育の手法や体系そのものに対する議論や検討が必ずしも十分とはいえない現状から、学際融合型で国際性を育む会計教育の検討に重要な示唆を得ることにある。 研究初年度において、会計人材の国際性を育む国際会計の講義内容や学習者を対象に同論文を成果としてまとめ、同一年度内に刊行できたことは、今後、会計学の企業分析、財務理論をコアに認知科学の知的なメカニズムを効果的に機能させた情報利活用を可能にする高度な知識・技術を同時に実装可能とする教育手法の構築を本研究で進めていく出発点として効果を有することが期待される。研究初年度から進めている日米の会計不正教育、情報倫理教育等の事例研究、予備的調査データのテキスト分析等については、研究2年度に継続して活動する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の遂行にあたっては、研究代表者と研究分担者等で活動の進捗状況等について定期的に情報共有をはかりながら活動を進めている。研究初年度(令和5年度)における主な活動は次の3点である。第一に、研究2年度(令和6年度)に実施予定の調査について、項目の洗い出しや選定に向け活動を行っている。調査の対象者としては、文系学部生に加え、文系、理系の垣根のない文理融合教育が提供されている研究代表者の所属学部生に調査協力を得る予定である。調査準備や教育手法並びに教材開発に必要な研究初年度に取得したイラストやデザイン作成、テキストマイニング分析向け機器やソフトウェア等を効果的に活用しながら、調査項目の選定と妥当性の検討を順調に進めている。 第二に、IFRS教育の質的向上を念頭におき、先んじて研究分担者が中心となり検討を重ねた成果をまとめた論文1点を日本簿記学会第39回全国大会・統一論題報告として発表し、同一年度中に雑誌への投稿・刊行を進めた。本論文では、簿記の既学習者を対象に調査を実施し、分析を行い、国際会計の学習との関わりから簿記学習に対する大学生の意識を明らかにし、簿記教育の効果と課題を検討している。IFRSの適用拡大による会計基準の品質向上の観点から、学習者が簿記会計に対する仕訳中心の意識をいかに変え、かつ、情報倫理やモラルを育んだ次世代の国際性に富んだ情報人材育成を担う教育手法の重要性を本成果は強調している。 第三に、研究代表者と研究分担者等が協力・連携しながら、日米の会計不正教育、情報倫理教育等の論点整理について進めており、情報モラルハザードとしての会計不正事例の整理作業を含め多岐にわたるケース等を踏まえ、研究2年度に継続して作業分担しながら活動を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の学術的問いは「グローバル・DX社会に求められる次世代人材育成を会計教育においていかに実現するか」である。DX化に伴うビッグデータや多岐にわたる会計情報の適切な入手・分析を通じて企業戦略立案や産業創出に生かす批判的思考と問題解決能力を有する多元的な人材育成を実現し、高度会計情報人材の裾野拡大を加速させる会計教育の新機軸を検討すべく、研究活動を進めている。 研究2年度(令和6年度)についても、研究計画に沿って効率的かつ効果的な研究活動を念頭に進めていく。研究2年度は、研究初年度の活動を基礎に、研究2年度内に大学生を対象とする調査を実施するべく準備を行っている。会計スキル、情報認知、意思決定行動等に関する傾向を探り、高度会計情報人材に資する新たな教育手法と教育教材の開発につなげていくことが、期待される効果として想定される。調査実施に向け研究初年度に行った調査項目の洗い出しと選定等の準備は順調に進んでいる。調査の有効性を引き出すため、研究代表者がまとめた情報系の授業教材等を適宜活用する。 本研究の基盤となっている予備的調査によって得られたデータの整理作業を研究初年度に一通り終えており、研究2年度には分析ツールを用いてテキストマイニング分析を進めていく予定である。また日米の会計不正教育や情報倫理教育の現状把握、情報モラルハザードとしての会計不正事例とその動向についての事例研究と整理についても研究初年度から継続して進める。研究活動遂行にあたり、研究代表者、研究分担者、研究協力者が適宜連携・協力を行い、研究3年度(令和7年度)以降に予定している調査分析並びに論点整理の結果を土台に、学際融合型教育の新たな教育手法・教育教材の検討並びに検証につなげ、最終年度となる研究4年度(令和8年度)には次世代イノベーション人材育成に資する学際融合型教育の新機軸開拓を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度末に実施した研究活動による支出や、研究初年度から研究2年度に継続して進める活動の一部で次年度使用額が生じている。次年度使用額の主な使用計画についてであるが、研究初年度末の3月下旬に執行した打ち合わせ関連費用、日米の会計不正教育、情報倫理教育、会計不正事例等の論点整理に向け必要な図書・論文の購入、デザインデータ作成費用、実施済予備的調査データのテキストマイニング分析を行うために必要なKH Coder等の分析ソフトウェアや保存メディアの取得等で使用する予定である。
|