研究課題/領域番号 |
23K01734
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
陳 怡禎 日本大学, 国際関係学部, 助教 (30845722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 台湾 / 政治運動 / ファン研究 / 趣味共同体研究 / 周縁 |
研究実績の概要 |
本研究は、「社会運動研究」や「趣味研究」の両面から、政治的場面における日常的趣味文化実践を考察し、集合的アイデンティティや認識に基づく「政治」と多様化した日常的で私的実践として捉えられる「趣味」の接点を明らかにすることを研究目的とする。具体的に、2014年に台湾で起きた社会運動である「ひまわり運動」や、その後の「ポストひまわり運動」時代(2010から2020年代)における選挙などの台湾政治場面に注目し、「ひまわり世代」と呼ばれる台湾の若者によって行われる「趣味実践」の様相を明らかにする。 本年度の研究成果について以下で説明する。 (1)調査:2024年1月に行われた台湾の選挙に対するフィールドワーク調査を実施し、選挙キャンペーンにおける正統戦略に関連するデータを収集した。 (2)国際会議及びプロシーディングス論文の発表:2024年3月に、台湾で行われた国際会議「2024文化研究年會」で、『為愛遠走異郷:「迷」的移動、加入、脱離』という題目でプロシーディングス論文を発表した。 以上の調査や論文発表において研究者は、2010年代以降の台湾社会背景や社会構造における若者の位置付けを明らかにし、さらに台湾の若者の趣味実践や社会関係ネットワークの構築の変化を解明した。本研究は調査を通して明らかにした台湾若者たちが中心から離れる「周縁」において、趣味実践を通して「形のない親密圏」を構築していることを、台湾で行われた国際会議(文化研究学会)に、論文を投稿し、口頭発表を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、4年に一度行われる台湾の総統選挙の選挙キャンペーンに対するフィールドワークを実施し、データ収集や整理を順調に行うことができた。中でも、スポーツ社会学より台湾の政治活動を分析することの可能性を新しい知見として得られ、研究としての拡がりを作ることができた。また、収集した選挙キャンペーンに関する一次資料に対する分析を行い、得た知見を用いて論文を執筆している一方で、現段階で得られた研究成果の一部を用いた口頭発表も採択され、2024年6月に国内の学会で発表する予定である。 また、政治活動に関連する一次資料を入手したと同時に、フィールドワークで得られた知見から発展し、戦後台湾の大衆文化、若者文化やアイデンティティに関連する二次資料も収集することができ、政治活動の実践のみならず、戦後台湾の社会文化やナショナリズムの形成過程などまで研究範囲を拡大させることができた。その研究成果の一部を論文として投稿した。 また、本年度の主要な発表業績は、「趣味研究」という側面から台湾の若者が直面した社会環境、そして研究のキーワードである「周縁」の意味について再考することができ、中でも、台湾社会における女性はいかに既成の社会構造の”周縁”に位置づけ、自身の「趣味」に基づき、社会関係を構築しているかを考察でき、本研究の目的である「政治」と「趣味」の接点を明らかにすることを検証するための知見を得られた。 そのため、本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策を以下のように考えている。 (1)2024年に行われた台湾総統選挙以外に、台湾で実施される政治運動、社会運動に対して引き続きフィールドワークを実施し、さらに、台湾の若者は、どのように「公共性」を求めてきたのかについて解明するため、戦後台湾社会に行われてきた社会運動の歴史や変遷を整理していく。 (2)フィールドワークやインタビュー調査を引き続き実施し、趣味共同体やファン研究という視座より、台湾の若者によって構築された趣味共同体の活動や共同体内部の関係性変化に注目する上で、私的趣味と公的社会空間との関係性について考察し続け、台湾の社会背景や歴史的視点を取り入れ、台湾社会構造における若者たちの位置付けを解明していく。 (3)台湾の政治活動だけでなく、より俯瞰的に東アジアにおける「若者文化」と「政治」との接点を明らかにするため、韓国や東南アジア(タイやマレーシア、インドネシアなど)の政治動向についても、新聞記事などの2次資料への収集を通して把握していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度での購入を予定した物品(パソコンやタブレット)の使用経費を2024年度に繰り越したため、次年度使用額が生じた。 また、2024年度には、前年度残額の約58万円に合わせて合計138万円の助成金を以下のように使用すると計画している:①物品50万円(パソコン30万円、書籍20万円)②旅費60万円(国内学会参加・発表10万円、海外調査30万円、海外学会発表20万円)③人件費・謝金(論文2本校閲、翻訳費用 28万円)。
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