研究課題/領域番号 |
23K01749
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
片岡 佳美 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80335546)
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研究分担者 |
猿渡 壮 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (10829576)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 条件不利地域 / 高校生の親 / 高齢化 / 地域コミュニティ / 外国人移住者 |
研究実績の概要 |
条件不利地域の人びとの生活実践・生活戦略について,以下の調査を行なった。1)県立X高校の保護者を対象とした調査票調査…2023年9月,島根県の中山間地域A町に立地する県立X高校1・2・3年の保護者を対象に調査票調査を行なった(居住地がA町およびその周辺市町村であるケースのみを対象)。回答票数は122件(回収率は約7割),有効回答票数は117件。2)県立X高校の保護者を対象としたインタビュー調査…2023年11~12月,県立X高校生徒の保護者6名にインタビュー調査を行なった。子どもの進路選択について,親の思いや子育て実践について聞いた。3)Y住宅団地でのインタビュー調査…2023年8~9月,島根県松江市のY住宅団地住民13名にインタビュー調査を行なった。住民が一斉に高齢期を迎えた団地で,コミュニティ維持活動について話を聞いた。4)外国人移住者の定住についてのインタビュー調査…2023年6月,島根県で暮らす日系ブラジル人1名に,地域生活についてインタビュー調査を行なった。 このうち1)の調査では,子どもが高校卒業後も今住んでいる地域で暮らしていると思わないという回答が多く見られ,生徒(回答者の子)の性別比較では,女子生徒のほうが「全くそう思わない」「そう思わない」の割合が大きかった(順に,女子では44.8%,23.9%,男子では26.5%,20.4%)。また,子どもに都会へ出てほしいという親の意向は,高学歴志向や安定した職業へのニーズ,家庭の経済状況といった要因よりもむしろ,個人の自由の重視や,子どもの性別が女性であることに影響されていることもうかがえた。地方の若年層の都市部への流出は従来,進学や就職の競争原理に巻き込まれたためといった説明がなされてきたが,個人化やジェンダーといった切り口から説明できる可能性が示唆され,この点は今後,より精緻な分析を行なって明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に実施を計画していた調査は,予定通り実施できた。研究成果の発表も,おおむね計画通り行なうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した調査について詳細な分析を行ない,学会報告や論文で発表していく。また,本研究の「資本主義システムから取りこぼされた条件不利地域の側から,新しい価値を見出す」という目的を達成するため,新たな調査対象に,花卉行商に携わってきた島根県八束町大根島の既婚女性たちを加えることを検討している。愛情や安らぎ(あるいはケア)のためでも,自己実現のためでもない,これらの人びとがつくり出してきた非近代家族的な家族生活を調査することを通して,近代(資本主義)的価値とは異なるものを具体的に見出すことを目指し,フィールドワークを精力的に行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査をすべて日帰りで実施したため,宿泊費がかからなかった。2023年度当初は旅費がかさむと考えたため,2023年度内に計画していたノートパソコンの更新(購入)を2024年度に延期したが,結果的に旅費は予定より少なく済んだ。この結果,次年度使用額が生じた。
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