研究課題/領域番号 |
23K01756
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研究機関 | 跡見学園女子大学 |
研究代表者 |
松井 理恵 跡見学園女子大学, 観光コミュニティ学部, 准教授 (50830676)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 植民地建築物 / 韓国 / ポストコロニアリズム / 観光資源化 / 地域コミュニティ |
研究実績の概要 |
本研究は、韓国に残された植民地建築物の中でも日本式家屋を対象とし、特に運営主体に着目して植民地建築物が観光資源となる条件を明らかにすることを目的とする。本研究のポイントは、朝鮮半島に日本人植民者が建てた植民地建築物が近年の韓国において観光資源になる過程を、ポストコロニアリズムと観光資源化の接点という視角から捉え返すところにある。 初年度である2023年度は、大邱の市民運動団体が主体となって進めた日本式家屋のリノベーションに関する著書『大邱の敵産家屋:地域コミュニティと市民運動』を共和国から刊行した。また、ハーゲン・クー著『特権と不安:グローバル資本主義と韓国の中間階層』を翻訳し、岩波書店から出版した。『特権と不安』は韓国社会を社会学的に分析した良書であり、本研究の背景となる韓国社会の文脈を明らかにする著作としても位置づけられる。まとめるならば、本研究の調査地域の一つであり、調査を先行して進めてきた大邱に関する研究を書籍にまとめ、韓国社会に関する翻訳を通じて本研究の土台を固める作業を進めたといえる。 韓国の現地調査は、調査予定の6都市中2都市で実施した。この他に、日本国内に保管されている植民地朝鮮関連資料の収集を進め、現地調査結果と突き合わせて分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は出版プロジェクトが複数重なった状況で進行したことに加え、調査を進めていくうちに日本国内の資料収集の必要性が明らかになったため、当初予定していた韓国の現地調査を計画通りに進めることができなかった。しかしながら、出版や資料収集は本研究を進めるうえで基礎となるものであり、韓国の現地調査も大邱と仁川の2都市では実施できたため、おおむね順調に進展していると評価するのが妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
国内での資料収集を進めつつ、初年度には計画通り進められなかった韓国の現地調査を進め、植民地建築物の観光資源化に関するデータの収集を都市別に積み重ね、比較の観点から本研究の知見を導き出す準備を整えていく予定である。また、これまでは東アジアを前提として研究を進めてきたが、東アジア以外の文脈においても本研究の位置づけを検討するために、欧米圏の研究者との交流も構想している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に出版プロジェクトが重なり、当初予定していた韓国の現地調査の回数が少なくなったため、旅費の支出が少なくなった。また、これにともなって、現地調査に使う機材を購入する必然性が低くなったため、物品費の支出が大幅に少なくなった。 次年度には当該年度に予定していた韓国の現地調査を実施する見込みであり、次年度使用額は主に物品費と旅費として使用する予定である。
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