研究課題/領域番号 |
23K01791
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
李 怡然 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20850366)
|
研究分担者 |
原田 香菜 早稲田大学, 法学学術院, 講師(任期付) (90879826)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 生殖 / 配偶子 / バンク / 家族 / レジストリ |
研究実績の概要 |
2023年度は、<フェーズ1:配偶子バンクとARTを通じた家族形成に関する国内外の法制度や政策に関する基礎的調査>に関して、家族法や配偶子・胚(受精卵)の収集・保管に関する法律やガイドライン等を収集し、日本の現状と国外の実態の整理を行った。特に、ヘテロセクシュアルのカップル、シングル女性・男性、セクシュアルマイノリティといった立場ごとに各種のART利用が法的に可能かどうか、配偶子バンクをめぐる諸制度、子の出自を知る権利、国・地方自治体または団体によるドナー情報管理といった観点から各国を比較分析した。日本では同年、超党派の議員連盟により「生殖補助医療法案」の骨子案がまとめられたが、仮に法案が成立した際にはART利用が法律婚の男女の夫婦に制限されること、子がアクセスできるドナー情報は一部に限定されること、国が認定した医療機関に限定されること、等の親と子双方に与えうる影響を考察した。 <フェーズ3:ART のステークホルダーに対するフィールド調査・インタビュー調査>に着手し、グローバル規模の商業展開がみられる大型配偶子バンクの代表例として、デンマークの民間配偶子バンクへの訪問調査と経営幹部に対するヒアリングを実施した。欧州や日本を含む諸外国の利用者の状況、シングル女性やレズビアン・カップルの利用者の割合、ドナーのプロフィールの選択可能性、医学的スクリーニングや遺伝カウンセリングの提供体制等について現状が明らかとなった。また、北欧以外の米国、アジア圏の状況について基礎的な情報を収集し、次年度以降の訪問調査の計画を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、2023年度に実施する<フェーズ1>文献収集・調査および<フェーズ3>の配偶子バンクの運営者を対象とするフィールド調査のうち、北欧の拠点の訪問を実現し、一定の目標を達成できた。文献調査および訪問調査の結果については、次年度に開催される学会にて報告が採択決定している。ただし、研究代表者の欧州における在外研究の期間が重なったこともあり、北欧以外の地域の配偶子バンクおよび日本支社の訪問に関しては、次年度以降の調査課題として持ち越すこととした。 次年度に計画している<フェーズ2:ART 医療者に対する質問紙・インタビュー調査>については、対象となる日本国内の医療機関についてリストアップを行い、調査項目の検討を行うなど準備を開始した。
|
今後の研究の推進方策 |
<フェーズ1>文献調査および法制度に関する比較検討を継続する。 <フェーズ2>に本格的に着手し、配偶子提供を用いた生殖補助医療およびヒト胚・卵子の凍結保存を実施している日本国内の施設に対し、ARTの提供状況、利用者からの問い合わせに関して質問紙調査を実施する。また、質問紙調査の分析結果に基づいて、専門家の価値規範をより掘り下げるためのインタビュー調査を試行する。 <フェーズ3>について、米国・オーストラリア・台湾等の配偶子バンクに訪問調査を打診し、フィールド調査に基づく比較分析を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、デンマークに加えて、オーストラリアおよびアメリカ等の配偶子バンクにおけるフィールド調査を予定していたが、研究代表者の在外研究と研究期間が一部重複し、研究分担者・研究協力者と連携して調査の打診や訪問を行うことが困難と判断し、次年度以降に遂行することとした。したがって、外国旅費として計上していた経費を含め次年度に繰越し、初年度の基礎的検討の内容も踏まえつつ、適宜訪問先の見直しをはかりながら調査を実施する。
|