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2023 年度 実施状況報告書

社会関係資本としてフリーライダーを活用する地域コミュニティの探究

研究課題

研究課題/領域番号 23K01795
研究機関九州大学

研究代表者

三隅 一百  九州大学, 比較社会文化研究院, 教授 (80190627)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
キーワード地域コミュニティ / 社会関係資本 / フリーライダー / 災害 / 公共財 / コモンズ
研究実績の概要

本研究の目的は、住民が部分的に様々な地域共有物の管理に関与するような形態で都市化社会の地域コミュニティを捉え、災害に焦点をおきつつ、フリーライダーの温存が社会関係資本として機能する条件を実証的に探究することである。
地域コミュニティは、地域生活に不可欠な地域共有物の管理に関わる社会システムとして捉えられる。それにより、住民が部分的に様々な地域共有物の管理に関与する分業や分担の有り様を、管理への協力という行動水準で分析することができる。令和5年度は、この地域コミュニティ概念の分析枠組み整備を実証的に進めた。データは、前回の研究課題で実施した熊本調査等の既存の社会調査データを使用した。
これにより、一般化された互酬性の規範が地域共有物管理への協力を促す、社会関係資本としての普遍的な効果をもつことがわかった。この規範が高い社会では、ある地域共有物管理のフリーライダーが別の地域共有物管理で協力する蓋然性が高くなるといえる。一方、従来の研究で着目されてきた一般的信頼については、協力を促す普遍的な効果は認められなかった。正負両面をもつ地域社会信頼については、ただ乗りよりは協力を促す可能性が確認された。
また、協力行動を阻害する要因として、災害に関わる社会的脆弱性、とくに異なる災害の累積が強める社会的脆弱性を析出する方法を吟味した。具体的には震災ないし水害とコロナ禍の災害累積が、社会階層とどのように関連するかを分析し、とくに精神的な面で個々の災害とは異なる累積効果があることがわかった。
数理モデルとして、社会ネットワークとゲーム理論を融合した公共財供給モデルを検討したが、定式化には至っていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

閾値を組み込んだ合理的選択理論で、地域共有物管理への協力を捉える理論枠組みは一定の整備をみた。数理モデルないしシミュレーションによる理論の精緻化は検討途上であるが、社会調査による実証は現状の理論枠組みの下で可能だと考えている。そのための分析枠組みもある程度整えることができた。
研究の経過発表については、幸いコロナ禍の影響も弱まり国際学会2件を含む諸学会での研究報告を予定通りに行って、有益なコメントを得て研究を進めることができた。論文も2本、これも有益なコメントを得て公表し、今後研究を進める足場固めを行うことができた。
また、本研究と本務での研究を関係づけて熊本以外の水害被災地の調査も進め、異なる災害、地域特性を考慮しながら地域コミュニティを比較分析する意義を、再認識することができた。

今後の研究の推進方策

予定通り令和6年度に社会調査を実施し、地域コミュニティにおけるフリーライダーの社会関係資本としての可能性を、実証的に検討する。当初の予定では調査対象を熊本市にしていたが、災害の種類や地域特性による地域コミュニティの多様なあり方を考慮しながら比較分析を行う方が有効であると判断し、九州の範囲で社会調査を実施したい。範囲を九州とするのは、申請者がこれまでの研究を通してある程度個々の地域の様子をつかめるからである。予算制約の中で、できるだけ精度の高いデータを得るために、モニターから無作為抽出する形でのインターネット質問紙調査を実施する予定である。
令和6年度の内にできる限りデータ分析を進め、途中成果を学会等で報告して国際的なレビューを受けながら研究を進める。数理モデルないしシミュレーションの援用も引き続き検討するが、理論全体の定式化というよりは、データ分析結果の説明に焦点をおいたモデリングの可能性を検討していく。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 地域水共有物コミュニティの現代的可能性2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 雑誌名

      第22回都市水害に関するシンポジウム講演論文集

      巻: 22 ページ: 1-8

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 災害の累積に留意した社会的脆弱性の分析:熊本震災、武雄水害、コロナ禍2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 雑誌名

      地球社会統合科学

      巻: 30(1) ページ: 28-42

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 佐賀県武雄市における未来共創ラボの試み-防災教材の工夫2024

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第10回震災問題研究交流会
  • [学会発表] -般化された互酬性をどう捉えるか2024

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第76回数理社会学会大会
  • [学会発表] 地域水共有物コミュニティの現代的可能性2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第22回都市水害に関するシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 災害の累積から社会経済的脆弱性をみる2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第96回日本社会学会大会
  • [学会発表] Cumulative Damage of Disasters and Social Vulnerability: Earthquake, Flood, and the Pandemic2023

    • 著者名/発表者名
      Misumi, Kazuto
    • 学会等名
      3rd Congress of East Asian Sociological Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Free Rider as Stock of Social Capital in Local Community2023

    • 著者名/発表者名
      Misumi, Kazuto
    • 学会等名
      XX ISA World Congress of Sociology
    • 国際学会
  • [学会発表] 地域水共有物に着目したコミュニティの検討2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第145回日本社会分析学会例会
  • [学会発表] 災害の累積と脆弱性-熊本地震、武雄豪雨、コロナ禍2023

    • 著者名/発表者名
      三隅一人
    • 学会等名
      第81回西日本社会学会大会
  • [備考] 三隅一人ホームページ

    • URL

      https://isgs.kyushu-u.ac.jp/~kmisumi//index.html

  • [学会・シンポジウム開催] Seminar on Culture and Value in Japan and South Korea2023

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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