研究課題/領域番号 |
23K01799
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
相澤 出 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 准教授 (40712229)
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研究分担者 |
浮ヶ谷 幸代 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (40550835)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 在宅 / 特別養護老人ホーム / 地域連携 / 看取り / チームケア / 高齢者住宅 / QOL / 地域づくり |
研究実績の概要 |
2023年度は、研究代表者、研究分担者が当初の研究計画のように、各人が担当するフィールドでの調査を実施し、そこで得られた調査結果をふまえた研究成果を出すことができた。 上記のような調査だけでなく、直接あるいは間接的に先行研究となる文献の検討も行いつつ、ケアの担い手側での「看取り文化」の生成と展開に関する理論的な検討等も進めることができた。 以上の、各人が取り組んでいる研究の内容に関する、定期的に対面あるいは遠隔会議システムを利用した研究会も行っている。これを通じて、各人の研究の進捗状況の報告、フィールドの概況に関する最新の情報の交換するなど、研究上で得られた知見を共有し、意見交換することもできた。 本研究課題は住み慣れた地域で、生活・人生の質(Quality of Life)を保ちながら、「看取り」まで暮らすことができるように、「自宅でない在宅」の場で新しい取り組みを行っているケアの担い手に注目し、そこでいかなるケアの文化が創出されているかを、事例に即して検討するものである。2023年度は、主として「特別養護老人ホーム」とその運営母体である社会福祉法人、「小規模多機能型居宅介護」とその運営母体である医療法人、メディカルシェアハウスとその運営母体である医療法人を対象として、調査を実施している。 2023年度の研究成果として、「自宅でない在宅」の現場で、独創的で、斬新な取り組みを行っているケアの担い手が、地元の地域と、多面的かつ積極的に関わっていることが明らかになった。本研究課題の調査対象地であるフィールドの多くが、医療機関や医療従事者が少ない地域であるといった事情もあるが、ケアの担い手が、狭義のケアや看取りだけでなく、地域づくりにまで関心を有していることが明らかになった。さらに、地域での連携はもちろん、地域ぐるみチームとなるようなケアへの志向、施設を地域に開く姿勢も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は5月から、新型コロナウイルス感染症が5類感染症として対応されるようになったこともあり、フィールドワークが実施しやすくなるなど、研究状況の大きな変化があった。しかし、ケアの現場での長時間にわたる密着した調査、ことに参与観察については、本格的な再開にまでは至らなかった。それでも可能な範囲で、聞き取りやメール等文書での問い合わせ、資料調査、遠隔会議システムなどを用いた情報交換等、多様な手段を用いながら、調査先である現場に関する全体把握に努め、一定の研究成果を上げることができた。 研究代表者については体調不良等、諸般の事情があって、フィールドワークの進捗が滞った。ただし、本研究での調査対象であるケアの現場については、継続して調査を実施し続けてきたこともあり、これまで調査から得られた結果、情報を分析し、これをまとめることが出来ている。これまでの調査研究のデータが整理されただけではなく、新たな知見も得られたので成果があった。さらにケアの担い手側の行為様式の変容や多職種での連携の工夫、地域・在宅の現場でのケアの変化に関する文献の検討を進めたことで、一定の成果も上げられた。 研究分担者は複数の現場で精力的にフィールドワークを進めており、当初の予定以上に調査を実施している。これによって、ケアの現場での最新の動向を捉えることができた。 以上の研究活動の成果にもとづき、各人が研究で得られた知見を論文化することもできた。 加えて2024年に関しても、調査先から調査研究へのご理解を得られており、本研究課題の発展的な継続の見込みが確保できた。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において主軸となる研究活動は、生活の場、とりわけ「自宅でない在宅」の場で、看取りまで積極的に手がけながら、生活・人生の質(QOL)の維持・向上のための新しい試みを積極的に進める、ケアの現場でのフィールドワークである。本研究課題は2年目を迎えているが、当初予定しているよたように、今年度もフィールドワークを実施していく予定である。そのフィールドワークについてであるが、以下のように予定している。 1)研究代表者と研究分担者がそれぞれ調査を担っているフィールドでの調査を実施予定である。研究代表者は、昨年度、体調不良等の事情のため滞っていた現地での調査を、積極的に実施する予定である。特に秋田県北部、宮城県北部で実施している調査を本格的に再開する。加えて、仙台市内で当初予定していた調査にも着手する予定である。 2)研究分担者は研究分担者は、引き続き北海道、東京都、神奈川県のケアの現場で、継続して調査を進める予定である。 3)研究代表者、分担者両者で共同してのフィールドワークも実施予定である。具体的には岐阜県のフィールドでの、共同での現地調査である。 4)昨年度までは新型コロナウイルスへの警戒のため、現場での参与観察の実施については慎重を期していた。しかし、新型コロナウイルスへの警戒も、昨年度途中から緩和されたこともあり、今年度は、各現場と緊密人連絡を取り、相談をしつつ、参与観察の実施の余地も探る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は研究代表者に、歩行困難になるほどの体調不良が生じ、療養が長期化したこともあり、当初計画していた以下の調査の実施が困難となった。具体的には秋田県北部、宮城県北部での頻回のフィールドワークの予定が困難となったこと、北海道および岐阜県で予定されていた研究分担者との共同調査が実施不可能であったことである。この想定外の体調不良と療養の長期化によって生じた現地での調査の困難により、当初予算として計上していた調査旅費の多くを使用することができなかった。 今年度については、研究代表者の健康状態が、昨年度に比べるとやや回復してきている。そのため昨年度に実施できなかった秋田県北部および宮城県北部での頻回のフィールドワークや、岐阜県で予定されている、研究分担者との共同調査も実施できる見込みがある。 加えて、昨年度は新型コロナウイルス感染症に対する警戒・対応を厳しくする必要があったため、フィールドでの参与観察が困難であったが、今年度はそれが可能になりつつある。 参与観察の余地が拡大すると、現地での滞在時間も長くなるため、昨年度よりも、調査旅費が大幅に増えることが予想される。上記の事情から、今年度は調査旅費を多くすることで、現地調査の実施回数を増やし、現地での滞在時間の長期化による現場観察の徹底を図り、本研究課題の推進を目指す。
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