研究課題/領域番号 |
23K01817
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研究機関 | 長野大学 |
研究代表者 |
新田 さやか 長野大学, 社会福祉学部, 准教授 (50584629)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 社会的バルネラブルクラス / ケアリーバー / カミングアウト / アフターケア事業 / 要保護児童 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)児童養護施設退所者であるケアリーバー当事者(以下、当事者)によるカミングアウト戦略の意義と実践上の課題の提示、(2)当事者と要保護児童のアフターケアに関わる中間支援団体との協同についての課題の提示、(3)カミングアウト戦略に基づくケアリングコミュニティ(以下、CC)形成のための条件と課題の提示を目的とし、カミングアウト実践事例の検討、活動理念・実践に関する当事者および中間支援団体への調査、CCのモデル形成に関わる多様なコミュニティ実践団体等への調査を位置付けている。 2023年度は、①カミングアウト実践に関わる調査枠組み構築に向け、児童養護施設勤務経験者へのリービングケアの状況と課題、当事者がカミングアウトすることに対する認識についての聞き取り、②当事者のソーシャルメディアによる情報発信、当事者によるクラウドファンディングを活用した児童養護施設についての本の出版や、当事者の声を集めたドキュメンタリー映画製作、YouTubeを活用した当事者発信等の実践事例を対象に文献資料、映像等の分析を行い、カミングアウト戦略としての可視化の課題と意義を検討し、論文として発表した。③当事者としての経験や活動について発信している当事者への調査を実施し、カミングアウト実践に対する考え方、課題と意義などについて聞き取りを行った。 上述の当事者活動からCC形成への展開過程の検討において、社会的養護を離れた後の生活や当事者の抱える課題と支援の必要性についての社会的認識が進む一方で、情報の受け手である社会の人びとにおけるカミングアウトに対する認識や理解は不十分であること、したがってソーシャルメディア等を活用したカミングアウト戦略では、対象が不特定多数の人びとであることによる当事者発信のリスクが存在することを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一年目は、当事者によるカミングアウトの実践事例の収集と分析、当事者へのインタビュー調査を実施することを課題とし、これらについて概ね取り組むことができた。しかしながら、当事者発信の取り組みに関わる映像資料、著作物等における語りの分析において映像資料の分析方法の検討に時間を要し十分に進めることができなかったため、次年度の当事者と中間支援団体との協同によるケアリングコミュニティ形成に向けた課題の把握と共に、語りの分析を実施計画に継続して位置付けて取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
二年目は、児童養護施設退所児童等アフターケア事業実施事業所のほか、直接的な支援ではなく当事者の活動へ助成し、支援活動の継続、財源確保による新たな活動等を可能とする中間支援団体や、子ども・若者たちに対するより実効的な支援など独自に社会的養護のアフターケアに取り組む中間支援団体に対する調査を実施する。調査にあたっては、その設立の経緯、支援にあたってのミッションと当事者との関り方についての考え方に着目し、独自の支援の理念、方法等特徴のある団体を対象とする。加えて、初年度にインタビューを実施した協力者のつながりを通じて継続実施する当事者へのインタビュー調査において中間支援団体との関りについての考え方も聞き取りを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー調査の実施回数が当初の計画より少なかったため、旅費と謝金の支出額が少なくなった。2024年度においても当事者へのインタビュー調査を継続実施するために使用する計画である。また、物品費としてインタビューデータ分析のためのソフト購入に使用する予定である。
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