研究課題/領域番号 |
23K01820
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
赤塚 俊治 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (40285656)
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研究分担者 |
後藤 美恵子 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (50347902)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | カンボジア / 高齢者施設 / プノンペンモデル / 人材開発 / 介護専門職 |
研究実績の概要 |
2023年度は社会福祉省(MoSVY)支援を受けて実施した高齢者の生活実態に関するアンケート調査の分析作業及び2024年9月に延期となった「高齢者介護職セミナー」と介護職予定者へのアンケート調査内容について社会福祉省(MoSVY)と検討会議を行った。その際「高齢者介護職セミナー」を踏まえて職員への教育モデルを構築するために、プノンペンモデルを検討することを最大の目的とすることで合意した。実施内容は、デイサービスプロジェクト“プノンペンモデル”の構築、新プログラムに向けた研修(講義、実技)を実施する。 実践的な研究調査活動は、2つの州で実施した。①カンダール州(Kandal Province)の村で高齢者夫婦を対象に聞き取り調査を実施した。多くの世帯は子どもが都市部で働いているため同居していない世帯が多く、経済的には厳しい状況である。とくに70歳以上の夫婦のどちらかが介護を必要としており、実態は老老介護であった。調査した世帯の中には、寝たきり状態で夫婦のどちらかが食事や排便などの世話をしていた。②ケップ州(Kep Province)のケップで聞き取り調査を実施した。沿岸部と内陸部に区分される地区である。現在は、中国からの投資によって観光地化している。調査研究した高齢者世帯は沿岸部と内陸部で聞き取り調査を実施した。沿岸部で生活している高齢者は、子どもと同居している世帯が多く、そのほとんどが観光客を対象とした海産物のお店を経営しており、高齢者の面倒は家族がしている。内陸部の高齢者世帯では、子どもとの同居が少なく、さらには単身高齢者世帯が多くいた。沿岸部と内陸部との家族形態の相違があり、内陸部ほど経済的には厳しい生活状況である。カンダール州と同様に専門的な介護を必要とする高齢者の多数が生活しているだけに地方に住む高齢者を含めた国家的政策として「介護支援システム政策」の確立が急がれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に実施する予定であった「高齢者介護職セミナー」と介護職予定者へのアンケート調査を2024年に延期するように依頼を受けた。カンボジア政府の新体制によって出席予定であった大臣や上級官僚たちが重要な会議と重なったため に参加できないとの理由であった。社会福祉省(MoSVY)との会議で「高齢者介護職セミナー」実施について話し合いをした結果、2024年9月に 「高齢者介護職セミナー」を実施することが確定した。さらには介護職予定者へのアンケート調査を実施することも合意した。それを踏まえ てデイサービス実施プロジェクト“プノンペンモデル”による検討会議を行い、プログラム内容の再検討を実施し、新プログラム実施に向け た研修(講義、実技など)の実施する。デイサービス,ステージ2の実践展開および検証を行いながら実施職員への調査を過去に実施した調査と比較検証をする。また、参加高齢者への調査を行い過去に実施した参加高齢者との比較検証を実施する。上記の調査結果からサポートシステムの課題を再抽出しサポート内容および社会福祉専門職としての介護福祉専門員(仮称)を確立するための検討会を社会福祉(MoSVY)と実施する。 計画していた都市部プノンペン以外の研究調査として、2か所の州で聞き取り調査を実施することができた。カンダール州(Kandal Province)とケップ州(Kep Province)である。高齢者夫婦を中心に聞き取り調査を実施した。調査から全体的に多くの世帯では子どもが都市部(プノンペンが多数を占めていた)で働いているために同居しておらず経済的にも厳しい状況にあった。とくに70歳後半以上の高齢者は、介護を必要としている。調査した世帯からみえてきたことは、今後の研究活動を通して研究課題である介護職の人材開発に向けた“プノンペンモデル”を関係機関と協力し、確立すること求められる。
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今後の研究の推進方策 |
研究活動の目的は、「カンボジア社会を機軸とした高齢者施設職員の人材開発-プノンペンモデルの実証的展開-」を具体化するために、デイサービスを職員、高齢者と共に試案を展開する。その際、実践プログラムには過去に実施した調査結果を投入し、プノンペンモデルのアウトラインを実証する。同時に、カンボジアの政策的な意図である「介護教育・訓連センター」と実践モデルを有機的に機能させるために、実践展開を「訓練」と位置づけ、実践のエビデンスとなる「介護教育」プログラムを開発し、理論に裏付けされたプノンペンモデルを構築させる。 2024年9月に延期した「高齢者介護職セミナー」と介護職予定者へのアンケート調査を実施することで研究活動の目的は、「カンボジア社会を機軸とした高齢者施設職員の人材開発-プノンペンモデルの実証的展開-」を具体化させるためにも関係省庁、カンボジア初の高齢者ケアセンターを本格的な事業を推進するためのアドバイスはもちろんではあるが、実際に働く介護職員への教育プロジェクトの確立や専門職員としての意識改革につながるプログラムも検討しなければならない。とくに社会福祉省(MoSVY)の担当部局ではまだまだ高齢者福祉政策の向上や政策的計画が向上していない現状を踏まえると、今後のカンボジア国内においては、ますます高齢者福祉政策は需要課題であることの認識と意識を高めるための研究活動を実施しなければならないと検討している。しかしながら科研費の予算額と急激な「円安」によって、いくら社会福祉省(MoSVY)から高齢者施設職員の人材開発のための要請を受けているとはいえ、どこまで介入して良いのかという課題がある。国連開発政策委員会(CDP)によると、カンボジアは2029年にLDCからの「卒業」が確定した。科研費のルールに沿って研究活動を実施しているだけに厳格に対応しながら研究活動を推進することが重要である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に実施する計画であった「高齢者介護職セミナー」と介護職予定者へのアンケート調査が社会福祉省(MoSVY)からの要請を受けて、2024年度に実施することになった。このことによって使用額が生じた最大の理由である。
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