研究課題/領域番号 |
23K01831
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
正野 良幸 京都女子大学, 発達教育学部, 講師 (90514167)
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研究分担者 |
森藤 ちひろ 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (10529580)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 社会的処方 / 孤独・孤立問題 / イギリス |
研究実績の概要 |
現在の日本社会では、近隣住民との関わりが以前と比べて希薄の状態になっている。また、新型コロナウイルス感染拡大により、地域コミュニティにおける住民との繋がりにも影響が出た。このような背景のなか、人々の孤独・孤立に関する問題が浮上している。この問題は、若者から高齢者まで幅広い年齢層が対象となる。孤独・孤立問題にいち早く取り組みを行っているイギリスの社会的処方のアプローチについて、情報収集や文献調査を行った。 2023年度は、ノッティンガム・トレント大学のクリフォード・スティーブンソン教授とZoom(オンライン)を用いたセッションを実施した。イギリスの孤独・孤立問題や自殺防止の取り組みについて、情報収集を行った。また、ロンドン・マートン区のソーシャルワーカーであるディー・ケンプ氏が来日され、社会的処方の仕組みや取り組み状況について話を伺った。社会的処方とは孤独・孤立問題を抱える利用者・患者の課題を解決するために、薬を処方するのではなく地域の活動やサービスなどに参加し、人との繋がりを重視して処方していくシステムである。 イギリスではNHS(国民保健サービス)の制度のもと、地域医療を担当するGP(一般医)が最初に診察することになる。そこから、孤独・孤立問題等であれば、リンクワーカー(Link Worker)と呼ばれる人材が紹介され、支援が開始される。リンクワーカーは、地域活動への橋渡しをする役割であり、利用者に適切な地域の社会資源をコーディネートしていく。ボランティア活動や共通の趣味を持つ人々の集まりに参加するなどして、孤独・孤立問題を解消し、前向きな人生を送ることができるような支援をしている。 このようなイギリスの社会的処方の仕組みを理解し検討することで、今後の日本における孤独・孤立問題の解決策を見つけていくことが、今後の研究課題としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は研究開始初年度であり、基本的にはイギリスの社会的処方に関する情報収集に重点を置いていた。ノッティンガム・トレント大学のクリフォード・スティーブンソン教授と、Zoomでセッションをすることができた。また、ロンドンのソーシャルワーカーであるディー・ケンプ氏が来日された際に、マートン区における地方自治体の社会的処方の取り組みについて把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、イギリスの社会的処方の制度や仕組み、取り組み内容や実施効果を検証していく。具体的な取り組み内容や効果を検証するため、ノッティンガム・トレント大学のクリフォード・スティーブンソン教授を招聘し、日本の研究者や関係者とのセッションを開催する予定である。ノッティンガム大学で行われている孤独・孤立対策のアプローチとして、NHS(国民保健サービス)とGP(一般医)、行政や民間団体、チャリティー組織等との関係性を明らかにしていく。孤独・孤立対策としては、どの機関がリーダーシップを図るのか、各機関の連携やパートナーシップはどのようになっているのか、クリフォード教授にヒアリングを行う。また、社会的処方の実施に向けた財源の確保はどのようになっているのか、予算配分等についても検証していく。 また、イギリスの現地調査も予定しており、社会的処方の先進的地域を選別し、各機関を訪問することにしている。具体的な連携のあり方や孤独・孤立の改善事例、または改善しなかった例なども、調査内容に入れていく。実施計画の策定方法や評価基準、費用対効果なども視野に入れながら、現地調査を通じて研究を推進していく計画である。 その後、イギリスの社会的処方の仕組みを日本に取り入れる場合に、共通する点は何か、相違する部分は何かを踏まえながら、検証していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていくにあたり、英語通訳の謝金などを準備するため、研究費の前倒しを実施した。しかし、結果的には支出をする必要性がなくなったため、次年度に繰り越すこととなった。
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