研究課題/領域番号 |
23K01833
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
高橋 味央 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (80828525)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 教育と福祉の協働 / 組織一元化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、教育委員会と子ども福祉部局の組織一元化を試みてきた先駆的自治体の事例研究を通して、教育と福祉における協働システムの展開過程とその論理を明らかにすることである。研究課題は次の3点である。①一元化という組織改編がどのように展開されてきたのか、その意志決定過程とアクターの行為を明らかにする。②改編された組織内で、異質な文脈を有する教育関係者と福祉関係者がどのように協働関係を構築してきたのか、その変容過程を明らかにする。③組織改編や協働関係の構築により、どのような包括的子ども支援システムが生成されたのか、その構造と展開過程を明らかにする。 調査対象とする先駆的自治体には、教育と福祉の協働によって切れ目のない子ども支援を標榜しているX市を選定し、一元化された組織で働く教育関係者および子ども福祉関係者に半構造化インタビューを行った。調査対象者は、一元化された組織の歴代の主要アクターおよび現在の構成員である。分析方法には、歴史研究や制度研究に適しているといわれる、オーラルヒストリーの手法を用いている。 X市行政の改編は幼保一元化から始動し、その後、教育委員会に子ども福祉関係部署が統合されるといった、数度にわたる組織転換が行われており、段階的・多元的な教育と福祉の融合が図られていた。改編当初は「教育畑」と「行政畑」の成員間で、使用言語や視点、価値観の相違などが浮き彫りとなり、分断や軋轢が生じた。しかし、人事交流や研修の実施、境界アクターの配置などの戦略によって、両者で対話を重ねられる場と機会を作りつつ、「X市の子どものために」という共通理念のもとで協働関係を構築していったことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先駆的自治体として調査対象地を選定し、主要なアクターにインタビューを実施することができた。インタビューデータの分析も開始できているため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の調査では、組織一元化の過程とアクターの行為をより鮮明に描出しながら、研究課題3に設定した、包括的子ども支援システムについても調査を行う。さらなるインタビュー調査を実施するとともに、会議や研修会等でのフィールドワークを実施し、質的データの量と質の担保に努める。 また、子ども家庭庁の設立や子ども基本法の施行、児童福祉法の改正、子育て世代包括支援センターや子ども家庭センターの新設など、子どもを取り巻く法制度・支援システムの転換が、一元化された組織の在り方やX市の子ども支援にどのような影響を与えているのかについても調査を進めていく。
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