研究課題/領域番号 |
23K01885
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
藤岡 孝志 中部学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30199301)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 子どもの意見表明支援プログラム / 関係特異性 / 支援者支援 / VOICEプログラム / LOVEプログラム / ヴァルネラビリティ / トラウマインフォームドケア / 子どもの最善の利益 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、虐待等を受けた子どもの意見表明についての環境整備、具体的な支援プログラムを含んだ「子どもの意見表明支援プログラム」を構築することである。傷ついた子どもたちは、支援者であれば誰に対してでもすぐに意見表明できるわけではない(関係特異性)。プログラム作成に向けて基本的な視座を構築するために国内外で調査した。特に、モントリオールにて、①VOICEプログラム、②トラウマとアタッチメントの観点による支援、③LOVEプログラム、について面接調査を行なった。①からは、子どもたちが傷つきやすさを踏まえながらも、そこに一緒に向き合うことで気づきにつながり、自分のウエルビーイングを主体的に感じる過程にこそ意見表明の要点があること(Vulnerability)、子どもの意見形成表明支援は子どもの発達を念頭に置きながらも、福祉、心理、法律、医療等含めた『学際的な視座』が重要であること、意見表明支援は話し言葉だけでなく、表情・しぐさなどの身体的な表現も大事であるという『言語表現に限らない多様な意見表明方法とその生成過程』に注目すること、意見形成・表明の過程を十分に保障することで、「子どもの最善の利益」を子どもと共有できること、すなわち『子どもの最善の利益』を対話や関与によって保障すること、等を共有することができた。②からは子どもの意見表明の場が、トラウマの再体験の場になってはならないし、語りが重視され、肯定的な関心を向けてもらっていると子どもが理解することで、トラウマインフォームドケアの過程そのものであること、すなわち意見表明だけで完結しないことなどを確認できた。③からは、写真やアートなどを通した自己表現や内省過程に関わるアプローチが意見形成表明支援に重要であること、個別面談だけでなく、グループワーク等での自己表現の醸成があることを支援者も選択肢に入れることの重要性などの示唆を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一段階として、初年度は、親及び機関・施設職員・里親に対する関係性を踏まえた子どもの意見表明の基本的視座を明らかにする面接調査を日本及びカナダにおいて実施した。さらに施設や養育家庭において、意見表明に至るまでにどのように子どもたちが、伝えるべき意見を醸成するのか、また、そこでの支援者の寄り添いや支援は、どのように行われているのか、これらについても、面接調査を行った。人によって示す問題行動(あるいは課題となる行動)や愛着行動が違う。子どもたちについての実態において、表出の相手との関係性において、意見表明の形成及び表出のあり方が異なることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
第一段階として、初年度(令和5年度)は、親及び機関・施設職員・里親に対する関係性を踏まえた子どもの意見(Views)表明の基本的視座を明らかにするための面接調査を実施した。二年度めは、第二段階として、関係特異性等に伴う関係性構築困難な状況がある中で、意見表明のプログラムを構築し、子育て支援、里親支援、及び児童福祉施設職員支援の3領域において適用し、その効果の違いを明確にすることで、領域にあった支援プログラムを構築する。さらに、できれば今年度内で、第三段階として、関係性の観点に基づく子どもの意見表明支援のプログラム(A 意見形成支援過程 B 意見表明支援過程)の構築及び精緻化・公表を行なう。第一、第二を踏まえ、第三段階 として、児童相談所や子ども家庭支援センターでの職員への面接調査及び質問紙調査を通して、意見形成支援過程・意見表明支援過程の両方で、関係性を踏まえた「子どもの意見表明支援プログラム」を構築する礎を検討する。これらのことで、関係性の観点に基づく子どもの意見表明支援のプログラムパッケージ(A 意見形成支援過程 B 意見表明支援過程)として構築する。その中には、第一、第二段階で構築した、実親及び里親・施設職員への意見表明支援支援プログラムを包含させる。第一段階(令和5年度)で明らかになったVOICEプログラム等の視座や支援方法も盛り込みながら、日本独自の「子どもの意見形成支援及び意見表明支援プログラム」を構築する(暫定版の作成)。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予算通りに執行できたが、人件費、謝金の支出において、支出予定を大幅に下回ることになった。 当初予定していた人件費については、研究者自身による解析ができたことで人件費支出なく当初の計画通りの研究調査及び結果解析ができた。また、謝金については、面接調査において国内外含めて実施したが、すべての研究協力者が謝金の受け取りを辞退した。結果、人件費、謝金両方の支出において、支出予定を大幅に下回ることになった。
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