研究課題/領域番号 |
23K01954
|
研究機関 | 活水女子大学 |
研究代表者 |
金 ミンジョン 活水女子大学, 健康生活学部, 准教授 (30610563)
|
研究分担者 |
韓 仁愛 和光大学, 現代人間学部, 講師 (40649464)
上原 真幸 熊本学園大学, 社会福祉学部, 講師 (60817542)
勅使 千鶴 日本福祉大学, 福祉社会開発研究所, 客員研究所員 (20086010)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 韓国の保育者養成課程 / 保育者研修システム / 保育ソーシャルワーク / 韓国の幼保統合 |
研究実績の概要 |
韓国では、日本と同様急激な少子高齢社会が進む中、多様な保育ニーズに対応できる質の高い保育を実施する保育者の養成は喫緊の課題となっている。本研究は、保育の質の確保及び向上の一環として、「幼稚園教師・保育教師」を乳幼児の養護と教育を担う「専門職」として位置づけた背景と現状及び課題を究明するために、幼稚園教師・保育教師の養成課程と研究システムについての調査研究を目的とした。 研究課題の1年目である今年度は、まず韓国の幼児教育・保育政策の動向を明らかにした。特に、2022年5月から始まった尹錫悦政府の国政課題の一つである「幼保統合」の動向について確認した。その「幼保統合」は、2025年度から本格的な開始をめざしている。「幼保統合」推進の課題の中で、特に、幼稚園教師・保育教師養成の制度的に二元化されている資格制度は研究的に検討を要する課題であり、今後も注目を続ける課題と考えている。3年制大学(漢陽女子大学校)と4年制大学(延世大学校、西京大学校)の保育教師養成課程及び実習指導の現状と課題を究明し、その内容を報告書にまとめた。①各保育教師養成校は、『保育教師2級 資格取得教科概要』(保健福祉部・韓国保育振興院編)に沿ってカリキュラムを作成すること、②実習指導においては各養成校の特徴や役割などを踏まえ、授業が行われていること等、詳細に聞き取り調査のデータを集めることができた。また、ソウル特別市にある2か所のオリニジップ(国公立、職場)と私立幼稚園を対象に視察と聞き取り調査を行い、各園での保育内容や実習生の受入れおよび指導体制について明らかにした。さらに、韓国の保育教師養成校で行われている講義・実習の基礎となっている「標準保育教科の概要」について、保健福祉部と保育振興院が上梓した『保育教師2級資格を取得するための標準教科概要』(全174頁)の内容を検討し、全内容を翻訳し、一冊にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に計画していた韓国の幼稚園教師と保育教師の養成校と保育現場、国の機関である韓国保育振興院に対する現地調査は問題なく実施できた。調査研究内容は、4人の研究メンバーで『韓国の保育者養成に関する調査研究2023(令和5)年度の研究成果報告書』としてまとめた。また、保健福祉部・韓国保育振興院編『2023(令和5)年度研究(翻訳版)「2020年改定 韓国の保育教師2級資格取得のための教科目 標準教科概要」』を翻訳し、一冊にまとめた。さらに、これまで研究会で検討してきた韓国の保育・幼児教育の政策動向と、幼稚園教師・保育教師の資格制度および養成課程について論文として公表した。その内容は、①「韓国における幼児教育・保育政策の現状と課題ー教育・保育の公共性・質の向上への取り組み(2008-2023)を中心にー」(日本福祉大学社会福祉論集第150号)と、②「韓国の保育制度と保育専門職の歴史的展開―託児所の始まり(1921年)から嬰幼児保育法制定(1991年)までー」(熊本学園大学『社会福祉研究所報(52)』)、③「韓国における幼稚園教師の資格基準と養成課程の成立および展開過程に関する一考察」(活水女子大学『活水論文集67集』)、④「日韓の保育者養成課程に関する一考察ー教授内容から見る保育者像-」(和光大学校『保育実習センター通信第14号』)である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究2年目の2025年度は、2023年9月以降の「幼保統合」の動向を踏まえ、①幼稚園教師と保育教師の資格制度に関する政策推進の状況と課題(韓国教育開発院の研究員に聞き取り調査)、②幼稚園教師養成のカリキュラム(国立韓国教員大学校と梨花女子大学校を対象に聞き取り調査)、③幼稚園での実習生受け入れの体制(②の大学校の附属幼稚園の視察)、④保育ソーシャルワークの実際(三星福祉財団を対象に「三星の包括的保育プログラムと評価」についての聞き取り調査と「九老三星オリニジップ」の視察)、⑤保育教師の資格管理および研修システム(仁川広域市の保育行政担当者の聞き取り調査)、について調査研究を行う。これらの調査内容は報告書の作成および論文などを通して公表していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
韓国の現地調査(保育者養成校と保育現場)を2回の実施として旅費を計上したが、初年次故の初動が少し遅くなったことと、両国の大学の学事日程が異なるため、聞き取り調査の時期が合わず、今年度は、1回の現地調査を行った。また、研究成果としてまとめた報告書の印刷作業もインターネッと注文やまとめ注文などで当初の予定よりも安い金額で報告書が完成できた。 次年度は旅費や謝金に関しては当初の計画通りに、保育者養成校と保育現場、保育行政に加え、保育ソーシャルワークの考えをもって地域のなかで事業を展開している三星福祉財団の「包括的保育プログラム」について聞き取り調査と視察を行う。また、国内外の学会参加費も支出予定である。
|