研究課題/領域番号 |
23K01962
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
上條 正義 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (70224665)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 着心地 / 蒸れ感 / 濡れ感 / 接触感 / 肌触り / 汗冷え / 水分移動特性 / 吸汗性 |
研究実績の概要 |
発汗によって衣服が濡れることでべたつき感と衣服の張り付きを感じ力学的な抵抗感による着衣不快感を生じる。吸汗して濡れた衣服の不快さを低減するために皮膚表面の汗を素早く吸汗し、拡散させ、蒸散する水分移動特性を向上させることができれば、着衣不快感が低減できると考え、これを検証する実験を行った。 試料とした水分移動特性を表面加工によって変化させたYシャツ(ポリエルテルと綿それぞれ50%の混紡糸による平織の生地)と、糸や組織によって汗処理加工されているスポーツウェア用生地を用意した。JIS L1907を用いて吸水性を評価した。さらに、含水率を変えた試料を作製して、LCRメータによって、含水量が異なる生地のインピーダンス測定を実施し、含水量とアドミタンス(インピーダンスの逆数)およびインピーダンスと線形関係であることを確認し、アドミタンスもしくは、インピーダンス値によって生地の含水量が測定できる可能性を得た。 着衣実験において、実験参加者は健康な男子大学生10名(年齢22±2歳,身長170±10cm、体重60±10kg)を対象とした。3種類のYシャツ試料をそれぞれ着衣した状態で心理生理反応を測定した。心理評価はSD(Semantic Differential)法によって14項目の形容詞対について7段階で評定した。生理反応として皮膚表面温度、顔面温度、衣服内湿度、心拍図、発汗を測定した。Yシャツとハーフパンツを着用し,24℃,55%RHに設定された恒温恒湿室(前室)に入室にてもらい、10分間安静する。結果として,水分移動特性が良い生地の方が、温熱的不快感が低減できることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の実施内容は、【1】水分移動特性が異なる生地サンプルの用意、【2】既存評価方法による生地サンプルの材料特性の測定と【3】交流インピーダンス測定による水分移動特性を計測する新方法を検討すること、であった。1年目の実施項目については、若干測定できなかった材料特性があったがすべての項目を実施することができた。【1】のサンプルの用意については、hap株式会社の協力により、Yシャツ生地の水分移動特性を変えることができる加工方法により、サンプルを得ることができた。【2】JISL1907などの既存の検査方法によって、材料特性の多くが得られた。【3】LCRメータを新規購入し、動作が安定したことにより、濡れによるインピーダンス変化が得られることが示唆される結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の課題は、「着衣時の発汗量計測が可能な水分移動特性の新規定量化方法の検討」であり、1年目で用意した生地を用いて、生地が濡れた場合のインピーダンス変化の結果を得る。 これを実現するために下記実験を計画する。 (1)各生地での測定が実現できるための電極の開発 (2)水分移動試験法の改良 さらに、2年目から3年目に掛けて検討する項目は、「着衣快適感の心理生理反応計測による評価と衣服布地に水分移動特性を付与するため方法の検討」 を実施する。
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