研究課題/領域番号 |
23K02019
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
梶木 典子 神戸女子大学, 家政学部, 教授 (00368490)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | プレーカー / 冒険遊び場 / 超少子化 / 都市公園 / 公募設置管理制度 / 外遊び / 居場所 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)これからの超少子化時代において、子どもの外遊びを推進する方法として「移動型遊び場(プレーカー)」を取り上げ、その可能性について検証すること(2)これからの都市公園のあり方に着目し、Park-PFI制度を活用した子どもの外遊び事業の実態を明らかにすることを目的としている。 2023年度の実績は以下のとおり。 (1)先行研究で調査したドイツのSpielmobile e.V.(プレイバス協会)の専門家7名と共に日本の先導的なプレーカー活動の現場を訪れ、プレイワーカーや運営者相互の交流を通して事業評価・課題抽出を行った。2023年には日本でこども家庭庁が発足し「こどもの居場所」がクローズアップされたこともあり、ドイツの専門家に対し日本における「居場所」の概念について理解を促した。こども家庭庁が掲げる居場所の事例として「プレーパーク」が入っていることから、居場所には「遊び」が大切な要素として取り上げられているが、ドイツ・日本双方のプレイワーカーたちは、「子どもが主体であることを忘れてはならない」ということを強調していた。 (2)官民連携の新たな公園整備の手法である公募設置管理制度(Park-PFI)を活用した公園整備の事例として、東京都渋谷区「えびすどろんこ山プレーパーク」(2022年9月オープン)を対象として、運営実態を明らかにするとともに、課題等について検証を行った。この事業は公募時点で「渋谷の遊び場を考える会」が運営者としてプレーパーク事業を実施することが盛り込まれており、事業者に決定した後に公園整備を行い、プレーパークの運営を「渋谷の遊び場を考える会」が行うという事業の枠組みである。公園に新たな価値の創造ができるのかは、民間企業と地域住民が中心となる遊び場づくり運営者が信頼関係を築きながら推進していくことが鍵となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プレーカーの活動実態に関しては、これまでの研究成果を発表し、講演会等で報告することにより、全国各地でその活動が認識され、取り入れる自治体や活動団体が増加してきていると共に、民間企業のCSR活動の一つとして、プレーカーを寄贈する企業が現れてきた。また、2024年1月1日に発災した能登半島地震の被災地でも複数のプレーカーが子どもの心のケアのために遊びの出前を行っており、被災地におけるプレーカーの有用性が認識されてきている。しかし、このような活動への公的資金が拠出されることが少ないため、国や自治体の施策としていくことが望まれていることがわかった。 コロナ禍を経て、子どもの外遊びはますます危機的な状況になっており、全国各地の自治体からは少子化対策を含めて、子どもの外遊び推進が緒に就いたところである。このような状況のなか、子どもに最も身近な空間である小学校の校庭においてもっと外遊びが可能となるよう事業を展開する事例も見られはじめている。現在、子どもの身近な空間における外遊びの推進について、小学校・公園・プレーカーなど、様々な関係者が連携して推進できるよう事例収集をしながら課題の整理に取り組んでいる状況である。
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今後の研究の推進方策 |
国内のプレーカー活動について、新たに始めたところを中心に実態調査を行い、事例収集を重ねていく。子どもの身近な地域における遊び場づくりということで、小学校や公園において子どもの主体的な遊びを実現している活動団体等に対し活動実態調査を行う。 あわせて、2023年度の研究においてイギリスのOPAL(Outdoor Play and Learning)という学校の休み時間を子どもの主体的な遊びを取り入れることにより、学校文化を変化させるという取り組みを知ったため、これについて文献調査を進め、日本において実践が可能かどうか検討していく。 Park-PFIによる冒険遊び場づくりの取り組みについては、国内の事例がまだ少ないため、それらの事例を収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は、本研究課題の前に取得していた科研費の最終年度(新型コロナウィルス感染拡大の影響に伴う期間延長による延期)となり、その総括に注力したため、本研究課題は次年度以降に一部延期して実施することにした。 2024年度は、2023年度の研究交流により新たな展開を得た校庭を使った子どもが主体的に遊ぶOPALシステムについて、イギリスの研究者・日本の研究者とともに研究を深め、日本で紹介できるように進める予定である。
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