研究課題/領域番号 |
23K02045
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
葛西 リサ 追手門学院大学, 地域創造学部, 准教授 (60452504)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 住宅確保用配慮者 / シングルマザー / シェアハウス / 居住支援 / 子どもの貧困 / 居住貧困 / ソーシャル大家 / 新しい公共 |
研究実績の概要 |
本研究は、母子世帯の居住貧困が、これまでの硬直的な住宅制度(公営住宅の直接供給等)では解決せず、民間力を活用した柔軟なハコと仕組みによって救済されるというスタンスにたち、他地域でも普遍的に応用できる「ソーシャル大家事業レシピ」の開発を到達目標とする。なお、本研究では、(1)公民連携型、かつ、(2)公民の既存ストックを活用した居住支援母体を「新しい公共」と捉えると同時に、この2つの条件を備える事業をソーシャル大家業と称す。なお、本調査が対象とする民間の範囲は、NPO、社会福祉法人、生活協同組合、個人事業主を含む営利事業者、であり、既存ストックとは、民間の空き家、公営住宅の空室を指す。活用される制度や仕組み、資源やプレイヤーは、いずれのエリアでも簡単に調達できること、つまり、レシピさえあれば構築できること、という条件を付す。 初年度は、当初設定した、居住支援モデル(1.公営住宅目的外使用型、2.新たな住宅SN補助型、3.福祉施設との連携型、4.物件寄贈型ミックス型)の4タイプの事例について現地調査を実施し、その全体像の可視化に努めた。このほか、新たに登場した「ソーシャル大家事業」に該当すると考えられる事例調査を行った。低所得階層を救済する事業モデルについては家賃の不払いリスクや入居者のケアも含め採算性が薄く運営資金の不足を課題として挙げる事業者は多数を占めた。ただし、新たなセーフティネット制度における家賃低廉化補助を受給する事業者(月4万円)については、安定的な運営ができると回答しており、同事例については更なる事業の拡大を図っていた。また、公的住宅ストックを低廉な家賃で獲得し、当事者に転貸する事業については改修費の負担は大きいものの、安定的な事業収入を得ることができると回答していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ソーシャル大家事業を4つのタイプに類型し、それに該当する事例調査を行い、その効果を測るためのバックデータを収集することを目的としている。2023年度は、計画に挙げた6事業者についての実態調査、さらに「ソーシャル大家事業」に該当すると考えられる国内の新たな取り組み(休眠預金等の活用による住宅供給モデルなど)についての情報整理も行った。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、当初の予定どおりソーシャル大家事業を利用する当事者への接近(利用までのプロセス、利用後の生活変化や子どもの状況、事業への総合的な評価など)を試みる。このほか、コロナ禍以降、エネルギー高、物価高等により母子世帯の生活は更に不安定化し、以前にもまして居住支援に対するニーズが高まったとする声も挙がっている。よって、同事業利用者以外のひとり親の住生活実態と居住支援への欲求について把握することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査について、先方事情でのオンラインの積極的な活用もあったため使用計画に変更が生じた。今年度は、国際な場での情報共有や報告も含め、現地調査を実施することを予定している。
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