研究課題/領域番号 |
23K02050
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
大江 猛 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主幹研究員 (10416315)
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研究分担者 |
吉村 由利香 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (00416314)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | ゼラチン / グルコース酸化物 / ゲル溶解温度 / 架橋反応 / メイラード反応 / フェントン反応 |
研究実績の概要 |
ゼラチンや寒天を利用したゲル材料は、咀嚼力の弱い高齢者に向けた食品の主力となっている。柔らかい食感のゼラチンは耐熱性が低く、一方、耐熱性のある寒天は食感が硬く、摂取者にはある程度の咀嚼力が求められる。そこで、本研究では、糖質酸化物による架橋反応を利用して、柔らかさと耐熱性を両立できるゼラチンゲルの開発に取り組む。以前の研究においてタンパク質の着色剤としてグルコースの酸化物を用いており、低温条件で牛革を着色する際に架橋反応が原因と類推される機械強度の増加が確認された。そこで、本年度では牛革の機械強度が増加した反応条件を参考にして、ゼラチンとグルコース酸化物との反応によるゲル溶解温度の影響について詳細に調べた。はじめに、反応溶液のpH値の影響について調べたところ、ゼラチン水溶液中にグルコース酸化物が存在すると酸性条件ではゲル溶解温度の低下し、反対にアルカリ性条件では溶解温度の増加が認められた。おそらく、酸性条件では、ゼラチンタンパク間の水素結合に必要なアミノ基がグルコース酸化物との反応によって減少し、その結果、ゲルを維持するためのゼラチン間の水素結合の数が大きく減少したと考えられる。アルカリ性条件では、酸性条件と同様にタンパク質のアミノ基が反応によって減少する一方で、塩基でフリーとなったゼラチンのアミノ基がメラノイジン色素と多点で反応することによって、結果として共有結合を介した架橋反応が進行したと類推される。さらなるゲル溶解温度の増加を期待して、水溶液中のゼラチン濃度の影響についても調べたところ、高濃度のゼラチンを利用することによって100℃を超える溶解温度を示すゼラチンゲルの開発に成功した。以上の結果から今年度に計画した概ね達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標として、グルコース酸化物によってゼラチンが架橋される反応条件の検討を挙げており、従来のゼラチンよりも大幅にゲル溶解温度が上昇できることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の目標であるゼラチンゲルの耐熱性を向上させることに成功した。そこで、次年度以降では得られた耐熱性ゲルの強度を調べることによって、研究の目的である「柔らかさと耐熱性を両立できるゼラチンゲルの開発」に取り組む。さらに、研究の目標が早期に達成された場合、ゼラチンの架橋反応には、試薬ベースの鉄触媒や水酸化ナトリウムを利用しているため、食品や食品添加物を代替とした架橋反応についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入したゼリー強度を測定する治具およびソフトの購入費が予定よりも高くなり、研究で調製したゼラチンゲルを保管する恒温恒湿器を購入することができなかった。翌年度分の助成金と合わせて装置の購入および試薬等の購入を予定している。
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