研究課題/領域番号 |
23K02052
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
植田 啓嗣 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (60757326)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | タイの教育 / 中等教育 / 教育環境格差 / 教育機会保障 / 社会経済階層格差 / English Program |
研究実績の概要 |
本研究は、タイの学校間の教育環境格差に注目し、学校間で生徒の社会経済階層がどの程度分断されているのか、学校間で生徒の進学機会にどの程度差があるのか、学校間で教育環境の差がどの程度あるのかについて明らかにすることを目的としている。そこで本研究では、一般国立中等学校、機会拡張学校、私立中等学校、大学附属学校、福祉学校、仏教学校という様々なタイプの学校を調査対象としている。 1年目(2023年度)は、「英語プログラム(English Program:EP)」に注目して、EPの学校を複数校(一般国立中等学校、私立中等学校、大学附属学校)調査した。調査対象地は中部チョンブリー県と北部チェンマイ県である。EPの学校で校長およびEP担当教員へのインタビュー調査、生徒へのアンケート調査を行った。EPに関連して、中等教育学校だけでなく、幼稚園や小学校の状況についてもインタビュー調査や参与観察を行った。 福祉学校や仏教学校についても継続的に訪問し、学校の教育環境や生徒の状況についてのインタビュー調査や参与観察を行った。 昨年度実施した本研究の予備調査に当たる内容(コロナ下の教育環境の学校間比較)を、2023年7月に日本タイ学会2023年度研究大会で発表した。また、2024年3月にInstitute of Asian Studies, Chulalongkorn University(タイ)主催で、これまでのタイの教育環境格差について行ってきた研究に関するテーマで講演会を行った。 今年度に実施したEPの研究に対する研究成果は、現在論文として執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目(2023年度)はEPの学校の調査を中心に行った。調査を通して、次のようなことが明らかとなった。EPの学校はプログラム費がかかることもあり、比較的経済的に余裕のある家庭の子が多く在籍していることがわかった。EPの学校はタイにおいて、教育環境が充実している学校であると言えるが、問題も多く抱えている。EPの学校では、数学科、理科、体育科などでも英語で教えている。そのため、ネイティブスピーカーの教員を多く雇用している。しかし、ネイティブスピーカーの教員の教育専門性・教科専門性が低かったり、継続年数が短く教員としての質向上が取り組みにくかったりする問題が見られた。EPの生徒は国際志向性が高いものの、それは英語圏の国々に対する興味・関心が高いだけであり、ASEAN諸国に対する興味・関心はあまりないこともわかった。EPの生徒はほとんど大学に進学するが、海外への大学進学者はほとんどいない状況である。このようにEPの学校の現状と課題について、現地調査を通して明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(2024年度)は、1年目に実施したEPの学校の教育環境、生徒の状況に関する研究を発展させるとともに、機会拡張学校、福祉学校、仏教学校といった教育環境に課題を抱えている学校の研究を継続する。2年目は定量分析を中心とする計画であるため、それぞれの学校で教育環境格差に係るアンケート調査を積極的に行っていく。また、職業訓練系の学校も調査対象に含めることを考えている。 2年目も国内外の学会・研究会で発表を行い、論文投稿を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2024年度にタイ現地調査を実施するために二回にわたり渡航する計画である。昨今の円安および航空券代高騰のため、当初の予定よりも2024年度の調査に係る費用が高くなる見込みとなり、2024年度には複数地域での調査を計画しており、調査に係る旅費が足りなくなることが想定された。そのため、2023年度に物品購入等を控え、次年度の現地調査に使えるように10万円弱を繰り越しした。
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