研究課題/領域番号 |
23K02188
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
長島 康雄 東北学院大学, 文学部, 教授 (50749158)
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研究分担者 |
崔 玉芬 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (10739155)
渡邉 剛央 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (30739173)
平吹 喜彦 東北学院大学, 地域総合学部, 教授 (50143045)
三戸部 佑太 東北学院大学, 工学部, 准教授 (60700135)
樋口 直宏 筑波大学, 人間系, 教授 (90287920)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 学校の管理下 / 登下校時の自然災害リスク / 民間企業の責任範囲 / 教職員の多忙化 |
研究実績の概要 |
本研究は,Eco-DRR(健全な生態系が有する防災・減災機能を積極的に活用して災害リスクを低減させるという考え方)の視点から,東日本大震災の教訓を次の自然災害対応に活用するための研究と位置づけられる。企業(産)と教育委員会・学校といった地方公共団体(官)ならびに大学等(学)とが役割分担して,児童・生徒の命を守るための自然の理にかなった新しい事業「持続可能な学校防災・減災体制を社会実装化するための方策」を開発することである。 研究開始の年度として,まず法的な側面について検討を行った。大川小判決で教育委員会・学校長に自然災害に対する情報収集義務が課され,本来児童・生徒の学びに責任を持つべき教員が,学区毎に異なる多種多様な自然災害(地震・津波・台風・豪雨・暴風・雷など)に対して防災科学の新知見を収集し続けることが可能なのかをインタビュー調査を通して明らかにすることからスタートした。日々生じる様々な生活指導への対応で,いつ発生するかわからない自然災害への対応にまで手が回らない現状が明らかになった。 上記を受けて,仙台管区気象台の情報利活用課との連携による情報提供の可能性について検討を行った。気象庁においても,自然災害の多発化,激甚化をふまえて,わかりやすい情報提供が進められており,視覚的に災害の程度を把握しやすいシステム構築が実現しつつあることがわかった。 一方で,情報提供の担い手として想定していた民間企業との共同研究は進展が見られなかった。学校に対する持続可能な防災情報の提供を行うためには,異なった形態での持続可能な防災情報提供システムの構築が必要になることが明らかになった。民間企業にとっては,情報提供に伴う責任の大きさに対応することが難しいということであった。 「学校の管理下」の範囲の広さが大きな課題となっていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「学校の管理下」の範囲が想定以上に大きいことが研究の遅れの主たる原因である。仮に学級担任が児童生徒の安全を確保するといった場合,一人の教員が約40人の児童生徒の安全を見守る必要が生じる。学校内での自然災害,例えば地震や津波のほか,竜巻や集中豪雨などの自然災害に対しては,学校敷地内の安全な場所,例えば校舎の中で見守るといったことが可能であるが,「登下校中の自然災害」に対しては,ほとんど無力である。各家庭に対する登下校中に生じる災害について教職員は対応することは不可能と言わざるを得ない。 本研究では,携帯端末による通信事業者と数度にわたって防災情報の提供に関する事業化について協議を行ったが,責任範囲に見合う価格設定が困難ということで現実的ではないという結論となった。 携帯端末を利用することでの安全確保が望ましいと考えていることから,新たな引き受け手を探す必要があり,想定以上に時間が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目として,現在検討している方策は次の3点である。 1つ目は,「学校の管理下」の範囲の広さが持つ課題を,法律的な側面を含めて検討する。児童生徒の自宅ドアを一歩出た時から,帰宅時のドアを開けるまでという考え方で,多発化そして激甚化する自然災害から児童生徒を守ることが現実的に可能なのか,慎重に検討する。 2つ目は,民間事業者が責任の範囲の広さから,事業化することが困難であるという結論を出したことを受けて,それ以外の方策を模索する。そのための手立ての1つとして,学校防災担当者向けの講習会において,仙台管区気象台の利活用官に気象情報の活用法に関する講習を実施し,教職員サイドからの「気象庁が提供する情報提供」について,検討する方針を立てている。 3つ目は,学校毎に重要度の異なる気象災害情報を自動的に表示するシステムの構築という形で民間企業が参画できないか検討する。情報の取捨選択についての責任を民間企業が負えないということから,その取捨選択は学校の教職員あるいは保護者が行う形で,その依頼を受けた形で民間企業が情報伝達部分を担うというシステムの可能性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めるために必要不可欠な調査機器の価格上昇によって、想定していた金額を越えてしまったため、異なる機器で対応した。未使用額については次年度の旅費ならびに物品費に充てる予定である。
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