研究課題/領域番号 |
23K02206
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
武石 典史 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00613655)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | 試験 / ラテンアメリカ |
研究実績の概要 |
本年度は、公的な制度、具体的には公的セクターにおける選抜・任用制度の形成過程を、諸アクター間の拮抗・妥協に着目しながら検討を進めた。特に、日本の官僚(文官)については公文書、官報や新聞、将校(武官)に関しては公文書や回想録といった史資料を網羅的に収集した。ブラジルを中心としたラテンアメリカの任用制度に関しては、主に「二次的」な資料を、タイの官僚については、「制度化」をめぐる動向の解明の手掛かりとなる文献資料を収集した。これら諸資料を丹念に整理し分析に着手することができた。
具体的には、近代日本、タイの状況を念頭に置きながら、ラテンアメリカではなぜ、任用制度(試験制度)に必ずしも信が置かれず、並行官僚制が根強く支持されているのかを調査した。たとえばブラジルでは1930年代にDASPを創設するなど、メリトベースド・システムを導入し、定着させようとする機運が著しく高まったが、1940年代半ばには挫折する形となった。以降、政府は、経済発展のためには「政治的安定」が必要としたうえで、 国民の政治参加を制限し独裁を正当化していく。1930年代から1990年代にかけて、官僚制度は何度も構築、解体、再構築された。
ラテンアメリカでは政権与党は自身が任命したわけではないcivil service careeristsに対し不信と懐疑を抱くという伝統があり、パトロネージ採用が受容されているのでは、という見通しを得ることができた。いわゆる、「後発効果」の再検討に示唆を与える可能性を秘めていると思われる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に必要な史資料を収集し、それらの整理と分析に着手することができた。 史料の解読を進めていくなかで、「後発国」と一括りに論ずるのではなく、類型化することの有効性についても検討をしている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も継続的に史資料の収集・分析を進める。 また、「三か国比較」を念頭に置きながら、本年度において十分に検討を加えることができなかったタイと日本における「試験」の動向に力点を置き、丁寧に検討していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
史資料の収集・整理を優先したため、予定していた経費執行に至らず、「次年度使用額」が生じてしまった。 次年度は、研究遂行に必要な経費を適切に支出していく。
|