研究課題/領域番号 |
23K02371
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
寺田 佳孝 東京経済大学, 全学共通教育センター, 准教授 (50705960)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 政治教育 / ドイツ / イスラーム / カリキュラム / 教科書分析 / トルコ / 移民 / 社会科教育 |
研究実績の概要 |
今年度は主に以下3点の作業を進めた。 第1に、ドイツのイスラーム差別・イスラーム嫌悪に関する日本語文献およびドイツ語文献を収集した。その内容を分析し、一方でドイツにおけるイスラーム嫌悪の発生件数について統計を整理した。他方で、ドイツにおけるイスラーム嫌悪の歴史的整理、とりわけ冷戦後における各局面における内容の特徴について、その時期に話題となった事件(著書の出版や政治的対立、政党の主張など)を手がかりに整理した。 第2に、ドイツの政治教育におけるイスラーム問題に関する内容を整理した。具体的には政治教育学に関する出版物の内、イスラーム問題を扱っている著作・論文に注目し、その論点を整理した。その結果、イスラームに関する内容については、一方でイスラーム解釈による過激化予防の観点が強調され、他方でドイツ人の中に広くみられるイスラームに対する差別・イスラーム嫌悪を批判する観点が重視されていることが分かった。 第3に、ドイツに居住するムスリムの視点からイスラーム差別あるいは教育の課題について検討した。この目的から、主にドイツで出版されたトルコ人によるトルコ語文献を収集し、その内容を検討した。その結果、当事者の観点からイスラーム差別が批判される一方、ドイツの政治教育学やリベラル派の強調する「人権」や「自由」という点がムスリム自身から見た場合、必ずしも同意するものではないことを明らかにした。 以上の3点をまとめ、2024年3月に世界史研究会にて「ドイツの政治教育とイスラーム」というテーマで研究報告を行った。そのなかでは、2010年代以降の欧州の政治情勢と関連してイスラーム差別が広がっていること、必ずしも学問的な知識によらずジャーナリスティックな著作や政治家の発言を契機としてイスラーム嫌悪が拡大していること、そうした内容の中身について報告し、それとの対応でドイツの政治のカリキュラムを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年の予定していた作業内容として、1、ドイツのイスラームをめぐる状況の文献収集とその内容検討、2、ドイツのイスラームを扱った政治教育の文献収集とその内容検討、3、ドイツの政治教育のカリキュラムと教科書の収集と検討、があった。このうち、いずれもその作業に取り掛かることができている。他方で、より深い分析がいずれも必要であり、次年度もこの点の作業を続ける。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の予定していた作業内容として、1、ドイツのイスラームをめぐる状況の文献収集とその内容検討、2、ドイツのイスラームを扱った政治教育の文献収集とその内容検討、3、ドイツの政治教育のカリキュラムと教科書の収集と検討、があった。この3点については、次年度以降も分析を続ける。 これに加えて、次年度は以下2点を重視する。 第1に、イスラーム当事者によるドイツの社会状況と教育状況の認識を検討する。この目的から、ドイツ在住のトルコ系の人々による著作を収集する。他方で、かれらに対するインタビューも可能であれば実施し、その具体的な意見を把握する。 第2に、本テーマに関し、ドイツにおける生徒たち(可能であればトルコ系も含む)のイスラームやポピュリズムに関する意見を収集する。そのために、現地の学校を訪問し、可能であればイスラーム等に関するアンケートを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より著書等の購入がなされなかったため差額が生じた。この額は翌年以降、著書購入等にあてる予定である。
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