研究課題/領域番号 |
23K02393
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
柳澤 良明 香川大学, 教育学部, 教授 (40263884)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | 民主主義教育 / 生徒参加 / シティズンシップ教育 / 主権者教育 / ドイツ / 政治教育 / 生徒議会 |
研究実績の概要 |
本研究の1年目はドイツの初等教育段階(日本の小学校1~4年に相当)の、おもに学級での民主主義教育と民主主義教育における生徒参加の実践の分析を行うことにより、初等教育段階での「民主主義的行動能力の獲得」における能力形成の特質を把握することであった。しかしながら、ドイツでの現地調査に際してメールを送付した何校かの基礎学校からの返信は無くアポを取ることができなかった。そのため、当初の計画を変更しアポを取ることができた中等教育段階Ⅰ(ギムナジウム以外)(日本の小学校5~高等学校1年に相当)の学校を訪問した。これは3年目の研究課題であったため、1年目の研究課題と入れ替えることとなった。 訪問できた学校はバイエルン州の中等学校1校と実科学校1校である。両校はともにバイエルン州の、どちらかと言えば政治教育を重視した民主主義教育政策のもとに設置されたモデル校に属しており、生徒議会を設けている学校である。生徒議会では生徒が様々なな案件について議論するとともにその成果が学校生活に生かされていた。こうした生徒参加の実態を具体的に知るとともに生徒代表にインタビュー調査を行うこともできた。 ドイツでは近年、各州独自の民主主義教育政策が進んでいる。今回訪問することができたニーダーザクセン州ではバイエルン州とは異なりドイツ民主主義教育学会の理念に沿った取り組みが進められている。前年度に訪問したラインラント・プファルツ州はこれらの2州とも異なり、各モデル学校での取り組みを重視したスタイルであった。 このように民主主義教育政策は各州の特色が出る傾向が強くなっていることが今回の調査で明らかとなった。そのため、各教育段階を縦断的に捉え直し「民主主義的行動能力の獲得」プロセスを解明するという本研究においても、各州の民主主義教育政策の特色を十分に考慮に入れながら研究を進める必要があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示したように、1年目は研究対象の変更が生じたものの、研究全体から見れば決して大きな問題ではない。次年度以降の研究計画を調整しながら、研究期間全体を通じて当初の研究目的を遂行していくことが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、2年目は中等教育段階Ⅰ(日本の小学校5~高等学校1年に相当)(ギムナジウム)の、学校での民主主義教育と民主主義教育における生徒参加の実践の分析を行うことにより、中等教育段階Ⅰでの「民主主義的行動能力の獲得」における能力形成の特質を把握することであった。しかしながら、1年目の研究において、初等教育段階に代わり中等教育段階Ⅰ(ギムナジウム以外)の学校を訪問することとなったため、当初の研究対象を変更する。また訪問調査の際の相手校の状況により、アポを得ることができないケースも考えられることから、初等教育段階の学校か、あるいは予定通り、中等教育段階Ⅰ(ギムナジウム)を取り上げるかのいずれかの研究対象に取り組むこととする。 その際に、研究実績の概要にも示したように、1年目のドイツでの調査により、各州の民主主義教育政策の特色を考慮に入れる必要があることが明らかとなったため、これまでに把握している州に加えて、さらにいくつかの州の民主主義教育政策にも新たに目を向けながら研究を進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
おもに次の2点による。第一に勤務校での校務が多忙をきわめたためである。所属する部局の長として研究とともに運営に関する業務が予想以上に多かったことが挙げられる。第二に科学研究費による他の研究との重複である。類似の研究テーマで獲得していた別の科学研究費による研究が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて1年間延長された。令和5年度はその最終年度となり、本研究と同時に進めることとなったことから、本研究に十分な時間を確保することができず、研究費の一部を次年度の研究に繰り越すこととなった。 しかしながら、令和6年度の半ばで所属する部局の長としての大きな職務が終わるとともに、科学研究費は本研究1本となるため、令和6年度以降は繰り越した分を含め、当初の予定どおりに研究を進めることが可能である。
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