研究課題/領域番号 |
23K02428
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
岩崎 仁美 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70584291)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 教員養成 / 図工・美術 / 造形的な「遊び」 / アート手法 / 問題解決型プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、教員養成に関わる図工・美術科の教育プログラムとして、“対立や葛藤を乗り越える場をデザインする造形的な「遊び」”というアートの手法を活用した問題解決型プログラムを開発することにある。そのために、本研究は3タイプの活動を軸として、①「アートの手法を活用した問題解決型プログラム開発」、②「対立や葛藤を乗り越える場をデザインする造形的な「遊び 」の理論構築」、③「特別な支援のニーズに応えている美術教師へのインタビュー調査」を実施している。 研究計画に基づいた研究初年度の令和5年度の実績概要は次の通りである。①アートの手法を活用した問題解決型プログラム開発では、先行研究として、主に北海道教育大学のHATOプロジェクトに関わった研究者の授業参観、実践に関する意見交換、資料収集などを行った。そして、美術科の教員志望の学生を対象に、ドラマ教育の手法や美術の手法を活用した実践を検証した。 ②対立や葛藤を乗り越える場をデザインする造形的な「遊び 」の理論構築では、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の美術教育に関わる学習指導要領(昭和22年版から現行まで)から造形的な「遊び 」の要素の抽出データの見直しを行った。学習指導要領の「目標」と「内容」を分けて、再度分析を行った。その考察に関しては、論文として執筆中である。令和6年度に、学会へ投稿予定。 ③特別な支援のニーズに応えている美術教師へのインタビュー調査では、その準備として、主に、特別支援学校の見学や授業参観、美術授業実践、教員との交流を行った。授業実践とその交流で得られた成果に関しては、論文として執筆中である。④その他、第46回美術科教育学会弘前大会に出席し、発表題目「アートの手法を活用した教員養成:ドラマワークと美術ワークによる学習者と教師の変化」の口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、美術教育の教員養成において、教育現場で起こり得る解決困難な課題に対して、アートの手法を活用しながら当事者とともに考え行動する教員としての資質や能力を育てるプログラムの開発を目指している。特に、いじめ問題や普通学級での特別支援的な課題に焦点を当てている。 研究初年度の令和5年度は、先行研究の調査、教員養成におけるアートの手法の実践と検証を主に行った。そして、特別支援学校や地域の福祉施設の当事者と共に考え行動する教員の資質を養う為の準備として、各関係者との交流や意見交換、特別支援学校での美術授業の提案とその実践なども行うことができた。調査や実践に積極的に取り組むことができた一方で、それらの記録や実践の振り返りなどをまとめ、関連する学会へ論文を投稿するまでには至っていない。ただ、論文の執筆中であるため、研究の進度はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度の研究計画は次の通りである。 ①アートの手法を活用した問題解決型プログラム開発では、先行研究の北海道教育大学のHATOプロジェクトの成果と課題を踏まえて、専門分野を超えた教員養成においても、教育効果を得られる可能性があるとの仮説を追加設定し、プログラムの実践計画を立てる。特に、北海道教育大学の「演劇的手法を活用した教員養成」の立ち上げ当時は、旭川校、釧路校、札幌校の教員養成課程3キャンパスで展開する計画だったが、10年後の現在、釧路校の集中授業としてのみ継続されていることがわかった。この点から、キャンパス間の連携は、長期スパンでの研究計画とその定期的な見直しを行い、健全に維持する方策が必要だと考えた。また、本研究の独自性として、造形的な「遊び」のアートの手法を使いて、プログラムの活動記録とリフレクションから変容を分析するという研究手法は、他の分野の研究者からも強い関心があることを確認することができた。美術科の教員志望の学生と他の専門分野の学生を対象にした、ドラマ教育の手法や美術の手法を活用した実践の検証を進めていく。 ②対立や葛藤を乗り越える場をデザインする造形的な「遊び 」の理論構築では、幼稚園、小学校、中学校、高等学校の美術教育に関わる学習指導要領(昭和22年版から現行まで)から造形的な「遊び 」の要素の抽出データの見直しと、再度の分析の結果と考察を論文としてまとめ、令和6年度に学会へ論文投稿する。 ③特別な支援のニーズに応えている美術教師へのインタビュー調査の準備として、特別支援学校の見学や授業参観、美術授業実践、教員との交流に関しては、令和6年度も継続させ、インタビュー調査項目の予備調査を行う。さらに、授業実践とその交流で得られた成果を論文にまとめ、令和6年度に学会へ論文投稿する。 ④その他、学会の口頭発表に参加し、他の専門分野の研究者と意見交流を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:研究初年度ということで、令和5年度は研究費の使用に少し慎重になってしまった。前期に研究のための物品購入を主に行い、後期の年度末から旅費としての使用を行なったため、次年度使用が生じたと考える。 使用計画:令和6年度は、昨年度の反省を生かして、前期から物品の購入や旅費での使用、他分野の研究者との交流のために、計画的に研究費を使用していく。特に、研究の質を高めるためにも、大学の夏季休業中の8・9月の計画的な使用を進めていく。
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