研究課題/領域番号 |
23K02496
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
小林 廉 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (20462161)
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研究分担者 |
成田 慎之介 東京学芸大学, 教育学研究科, 准教授 (00804064)
花園 隼人 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (60816495)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 数学的な見方・考え方 / 高等学校数学科 / 授業デザイン / 教育課程 / 授業研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,高等学校数学科における個別的内容に即した「数学的な見方・考え方」を具体化し,それを生徒が働かせていけるような授業デザインの枠組みを構築するとともに,教育課程における「数学的な見方・考え方」のより適切な位置づけについて示唆を得ることである。そのために,研究分担者2名と研究協力者(実践者)12名で研究グループを組織し,研究を開始した。具体的には,1年間で2回の授業研究を実施した。 1回目の授業研究は,数学Ⅰ「図形と計量」において,統合的・発展的に考えることとしての一般化を働かせて余弦定理を創出することを試みた。この授業研究からは,「数学的な見方・考え方」を内容固有ではないが授業として具体化が可能な表現として言語化し,一方で目標としての資質・能力を内容固有の表現で言語化することで,「数学的な見方・考え方」が数学的に考える資質・能力の育成にどのように働くのかを分析可能になることが示唆された。実際,ここでの「一般化」が「主体的に学習に取り組む態度」の育成に働いていることが示された。この分析については学会で口頭発表を行っている。 2回目の授業研究は,数学Ⅲ「微分法」において,関数の構造に着目して式と図形的な意味を関連付けることを働かせることにより,合成関数の微分法を創出することを試みた。この授業研究からは,単元あるいはそれを超えた範囲において,生徒が働かせる「数学的な見方・考え方」から配列を意識すること,また特に重視したい内容において働かせたい「数学的な見方・考え方」を中心に据えて,単元において内容だけでなく「数学的な見方・考え方」の配列をデザインする必要のあることが示唆された。数学Ⅲにおける本格的な授業研究の実施は一般にはなかなか難しいため,貴重な授業研究となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り年間2回の授業研究を実施することができ,その分析も進んでおり一部は学会発表を行うなど,計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の2回の授業研究で得られた示唆を踏まえて,2024年度も2回の授業研究を実施予定である。本研究の強みの一つは多様な学校の教員に協力者として集まっていただいていることがある。2024年度の授業研究は,2023年度とは異なる層,また異なる地域で実施する計画が既に立っている。 また「見方・考え方」には教科の中核概念(ビッグアイデア)の側面があり,それがカリキュラム・オーバーロードを克服する視点となることが示唆されている。本研究はエリクソンらの「概念型カリキュラム」を理論的基盤の一つとしており,これを背景とする国際バカロレア認定校の教員にも協力者として参加いただいている。同時に,数学教育研究における「数学的な考え方」の研究では,元来,「数学的な考え方」には「数学の内容に関係した数学的な考え方」があるとされてきている。このあたりを再整理することで,「見方・考え方」とカリキュラムとの関係を検討していく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
主には,授業研究に用いる意図で購入予定だった物品の発売が2024年度にずれ込んだため当該助成金が生じた。その物品はそのまま2024年度に購入予定のため,元の使用計画に大きな変更はない。
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