研究課題/領域番号 |
23K02513
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
五島 敦子 南山大学, 教職センター, 教授 (50442223)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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キーワード | アメリカ成人教育 / 継続教育・生涯学習 / 社会人教育 / 学修支援 / リスキリング / リカレント教育 / 大学開放 / 学び直し |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、米国高等教育における成人学生の学修支援の方策を解明することにある。研究初年度である2023年度の成果は次の2点にまとめられる。 第一に、連邦及び各州の政策動向に照らし合わせてコロナ禍後の変化の軌跡を分析した。コロナ禍下では、米国救済計画法に基づく高等教育緊急救済基金によって多額の学資援助が行われたが、バイデン政権下では、その援助が非学位課程や継続教育課程の受講者にまで及んだ。その後、連邦教育ローン免除、マイノリティ及び低所得者層の進学支援、営利教育機関に対する監視の強化などによって学生を支援並びに保護する施策などが着手された。コロナ禍沈静化後、大学進学率は回復しつつあるが、SCNC(SCNC:Some College, No Credential)、すなわち、学位・資格を取得しないまま中途退学する人々の再入学率はむしろ低下しており、その支援が課題である。 第二に、訪問調査に先立つ予備調査として、各種の大学協会、専門職団体、シンクタンクなどの調査研究結果を分析した。コロナ禍下では、オンライン学習の実績をもつ継続教育部局(School/Division of Continuing Education)に新たな学習者が殺到するとともに、学内では既存学部におけるオンライン学習の進展に貢献した。具体的には、学位プログラムのオンライン移行を技術支援したり、教員にFD講習を提供したり、オンライン・プログラムの運営を代行したりした。また、学内部局の調整や福祉サービスとの連携の必要性などから、学修支援を一元化する「繋ぐ人材」として新たな学修支援職を導入する事例がみられた。しかしながら、多忙な支援職のメンタルヘルスの維持や業務軽減が課題となっていることから、彼らの養成と研修を調査及び検討する必要性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「第13章 アメリカにおける成人学生の学修支援―アンバンドリングとリバンドリング」(『学び直しとリカレント教育』(ミネルヴァ書房、2023年、pp222-236)を執筆し、2000年代から今日にいたる米国成人学生の学修支援策を整理することができた。具体的には、既知の知識や経験を活かして効率的に学修するための方策、たとえば、経験学習評価制度、コンピテンシー・ベースド教育、マイクロクレデンシャルなどの多様な選択肢が提供されていることを明らかにした。現在は、「アンバンドリング(分解)」された学びを「リバンドリング(組み直し)」するための支援が肝要であり、非学位課程から学位課程へのシームレスな移行をすすめる方策が必要であることを指摘した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、以下の方策で研究を遂行する計画である。 (1)予備調査の結果を論文として公刊する。 (2)米国訪問調査により、学修支援の組織体制について組織管理者等に対する聞き取りを行い,日米比較の観点から特徴を検討する。 (3)大学と成人を繋ぐ専門職の育成をねらいとする各専門職団体の養成・研修プログラムの内容と特徴を明らかにし、専門人材に求められる資質・能力のモデルを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、学会発表をオンラインで行ったため、国内旅費が不要となったためである。本年度は、当初の研究計画に従って米国訪問調査を実施する予定であるため、計画通りに使用する見込みである。
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